車輪小説
□彼女と彼の利用価値
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ブゥーーーン
機械の低い音にペリドが目を覚ますと、見た事もない部屋にいた。
カチカチと何かが動く音や、一定のリズムを刻む機械音もする。
潮の香りはせず、代わりに油のベタベタしたような空気が充満している。
あまり聞き慣れない音と臭いに溢れた部屋。
昨日はたしかに軍の宿舎で寝たはずなのだが、と首を傾げる。
「…目覚めた」
「!!」
突如、背後から声がして驚いて前方に転んでしまう。
相手を確認しようと振り向けば、そこには薄桃色の衣装に包まれたゴブリンの少女がいた。
「だっだだだ誰なんだな!?」
「私はコトパクです」
「ここ、こっ…ここはどこなんだな!?」
「ここはグランガイア古代機械研究所兼自宅」
「ぼぼぼぼ僕は、どどどどうして、こここに?」
「私が連れて来た」
表情を変えず、口元だけを動かし機械的に答えるコトパクに、ペリドはどこか不気味な物を感じ、後ずさるも、同じ分だけコトパクが近付いて来るので、二人の距離は変わらない。
「なななな何が目的なんだな!?」
「お前が欲しい」
一瞬、固まる。
ペリドには一生縁のなさそうな言葉だったからか、それを飲み込み理解するのにも時間がかかった。
「コトパクとペリドは運命共同体。共にあるべき」
「え、えと…??」
ものすごい事を言われている自覚はあったが、頭が追いつかなかった。
難しい言葉や比喩を次々に口にされるが、もはやペリドには謎の言語としか捉えられず、混乱を極めた。
途中で、きちんと理解しようとするからいけないんだと悟り、聞く事を放棄し、台詞が切れるのを待ってペリドは切り出した。
「つ、つまり、どういう事なんだな?」
「…利用されろ」
「そそそそれは無理な相談なんだな!」
淡々と言い放つコトパクにペリドはぶんぶんと首を振る。
それまでの言い回しからは考えられないほどストレート。普通ならば「協力して欲しい」とでも言う所だろう。それなのに。
「ペリド、コトパク都合いい。利用されるべき」
「そそそそんな事ないんだな! 無理なんだな!」
首と手を思い切り振る。
これ以上続けても同じ事の繰り返しと考えたペリドは、部屋の中を見回し、出口を探した。
しかし、ドアを見つけた瞬間、押し倒され腰の上に跨がれ、脱出は叶わなくなってしまった。
「なっ…ひぃっ!?」
情けない声をあげてしまう。
一定のリズムを刻む機械音に合わせて、何故かコトパクとの接触面が振動したのだ。
気になって視線を向けると、コトパクはバサッと自分のスカートを捲り上げた。
思わず赤面する。
「ななななななななななななななな」
「何かを得るには同等の対価が必要だ。ペリド利用する。だからコトパク好きにすればいい」
淡々と告げるコトパクだったが、ペリドは開いた口が塞がらなかった。
見せられたスカートの中に普通はあるであろう大切な所を隠し守るものがなく、代わりに太い棒状に見える機械がねじ込まれていた。
先ほどから大きく響いていた機械音と振動の正体はそれらしく、確かに一定のリズムで震えているのが目に見えた。