車輪小説
□数字で五題
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1『理解不能人物1号』
「おはようございます」
にこりとした笑顔と共に降ってきた言葉に、ボクは一気に目を覚ましてしまった。
「なっ…なっなっなっ…!?」
開いた口が塞がらない。
「なんでキミがボクのベッドで一緒に寝ているんだよ!?」
「入りますよ、って言いましたけど?」
「ボクは聞いてない!!」
あぁ、もう、本当、なんなんだ!
耳障りなクスクス笑いが聞こえる。
イラッとして、ボクは彼を睨みかけて…思わず固まってしまった。
あまりに切ない表情で、本心を隠すみたいな笑みを浮かべているから。
あーもうっ!
「…勝手にしてくれ!」
わからない。
このボクでさえわからないキミと、これ以上関わったら、答えの出ない闇の中へ連れ込まれそうで。
キミを理解する事は諦めて逃げた研究者失格なボク。
それでもキミは。
「えぇ、勝手にさせていただきます」
また、クスクス笑って。
ボクを背中から抱き締めて来て。
手の平の行き先はからかい混じりなのに、腕は震えて。
…本当にキミはわからない。
永遠の謎かもしれないね。