□高価なもの
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「『こんにちは!私とお友達にならない?』」



「…名前…何をしている?」





俺から見えないように隠れて、昨日あげた人形だけ覗かせる。



そして恐らくその人形に声をあてているのだろうが、いつもより声を高くして俺に話し掛けてくる。





「もーっ、角都ノリ悪いよー。」



「くだらん。」



「まあ人形相手だからね、角都も恥ずかしかったんでしょう。ということで!」





そう言って名前は俺の前に…これは何だ?人形?…らしき物体を差し出した。



随分と不恰好だな。





「これは一体何だ?」



「角都人形!これで角都も私にくれたお人形と遊べるでしょ。」



「角都人形…これが俺か?」



「うん!」



「さすがに俺もここまでは不細工じゃない。随分と金に縁の無さそうな顔をしている。」



「っ、ごめんね。で、でもね!愛はたくさん詰まってるから!それに私とは縁があるよー、なーんて。」



「手作りか?」



「うん。」





こんな不恰好な人形何の役にも立たん。
俺が作った方が余程売れるぞ。




だが、名前の手作り。
愛はたくさん詰まってる。
名前と縁が…



くだらないとわかっているが、何故だろう。
これが物凄く高価なものに見える。
だからか?無性に嬉しいのは。




高価な物を貰ったから嬉しいのだろうか。



名前から貰ったから嬉しいのだろうか。




名前から貰ったから、高価なもので。
だから…嬉しい、のか。







…自惚れてもいいか?
名前も俺から貰ったから、あんなものでも喜んだのだと。



期待してもいいか?
明日こうやって俺の元へ来た時、気持ちを贈ったら名前が笑ってくれることを。



そして、名前も俺に気持ちをくれることを。





それは俺にとって、何より高価なものだ。








END
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