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□高価なもの
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「角都ーっ!」
また今日も来た。
今日は可愛らしい小さな人形を用意してある。
別に特別用意した訳ではなく、ただ単にふと見掛けたからで、本当に安物だったから何となく買っておいただけだ。
こんなことに金を掛けるなど馬鹿馬鹿しい。
ただ今日は、雑草も手頃な花もなかったから。
追っ払うものが何もなく、付きまとわれたら金も稼げないからだ。
ただ、それだけだ。
「角都から貰ったお花とか草、元気に育ってるよ!大切にしてるからね。」
そんな嬉しそうに、馬鹿じゃないのか。
あんなもの、金にも何の役にも立たないのに。
大切にして何の意味がある?
「角都も見に来る?」
「そんな暇などない。」
「癒されるかもよ。とっても可愛いの!」
「俺は忙しいんだ。これやるからあっちで遊んでろ。」
「わっ…え?これ…人形?」
何だ?気に入らなかったのか?
…気に入らないなら気に入らないで捨てればいい。
所詮何の役にも立たず、金にもならんゴミだ。
お前を追っ払う為だけの人形だ。
気に入らないなら…勝手に…
「可愛い!角都買ってくれたの?私の為に?」
「拾っただけだ。」
「えへへ、ありがとぉ。」
だらしなく顔を緩ませて、頬を赤く染めて喜ぶ名前。
拾った訳ではないが、拾ったも同然の安物。
何の価値もない。
何の価値もないのに、お前がそんな風に大切そうに笑うから。
さっきまでゴミだと思っていたのに、高価なものに見えてくる。
俺は金になるものが好きだ。
だからだ。
少し嬉しくなったのは。