□せめて笑顔が戻るまで
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俺は完璧に感情なんてもんを捨てたはずなんだが。




コイツのせいで捨てたはずの感情がいつの間にか舞い戻ってくる。




しかもその感情さえ愛しく感じ、今では失うことが恐ろしい。






「サソリさん。あの、…ちゅー…してください。」





そんなお前が可愛らしくねだるから、俺はお前を甘やかしてしまう。





「…んっ……」





お互いの舌を絡ませて深く、深く口付ける。




名前が愛しくて愛しくて、名前の全てを俺で染めたくなる。





「…っは、はあ…はあ…」





顔を真っ赤にして、苦しいのか肩を上下させて息をする。
厭らしく口の端を伝う唾液が加わって色っぽい。




小娘のくせに、意図も簡単に俺の理性を崩す。





「サ…ソリ…さん…好き…好きです…サソリさん…。」





切な気に、確かめるように囁く名前。




俺も名前が好きだ。
愛している。




言葉の変わりに強く抱き締めた。






こうしていられるのも、あとわずかなような、そんな予感がする。




俺は待つのも、待たせるのも好きじゃねーが、もしも俺と名前を引き裂くような何かがあるとしたら…。





どうか待ってくれ。
俺は名前ともっと一緒にいてぇんだ。




最近、名前も俺もうっすらと気付いてんだよ。
残された時間が少しだって。
根拠はねぇけど、それは確実に思えて。
柄にもなく恐れてる。




名前が俺にいつも以上にすがるのはその為だ。
いつもは迷惑を掛けたくないからとすがらず、1人で我慢する奴だから。




俺が消えたら名前はどうなる?
今でさえ、泣きそうに震えているのに。




だから待ってくれよ。
せめて名前が笑顔になるまで。






END


 
 

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