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□海でも山でも
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「ぜーったい山!」
「いや、絶対海でしょ。」
この言い争いが約何時間前から続いていることか。
デートしようってことになって、夏といえば海だよねって言ったら、名前何て言ったと思う?
「夏と言ったら山でしょ。」だって。
暑さのせいで馬鹿になっちゃったの?
ボクは名前のことが大好きだから、名前の行きたいところに連れて行ってあげたいし、名前がいればどこでも楽しいと思うんだ。
でもさすがにね、山はないでしょ、普通に。
このくそ暑い中、何で山登りなんてしなきゃいけないわけ?
海はいいよ。暑いけど水あるし。
そんな海の魅力を力説してあげたんだけど、名前はどうしても山がいいみたいで。
「ていうかさー、海って何より名前の水着姿見れるだろ?」
今までずーっと反抗してきた名前が、急に顔を真っ赤にしてピタリと止まった。
「ボクの水着姿も見れるよ?」
「見たくないし。それにあんたよく裸じゃない。」
「名前のえっち。」
「あんたこそ。」
「ここまで言って、何で海嫌なの?」
「…とにかく嫌なの。」
「理由は?理由がないと納得できる訳ないだろ。」
「ひ、日焼けが嫌だから。」
「えー、嘘だー。だって太陽がガンガンに出てる時でも日焼け対策なんて何もしない名前が日焼けが嫌で海が嫌なんて、絶対嘘だね。」
名前は暫く黙り込んでから、真っ赤な顔を手で覆って、何だか一生懸命話し始めた。