通りすがりのニンフ

□勝敗はすでに決まっていた。
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その日はとてものんびりしたい気持ちだった。
外は珍しく可愛らしいはらりはらりとした雪が降っていてそれを眺めていた。
空は厚い雲に覆われて太陽はどこにあるのか分からないくらいだ。
火鉢に近づき冷たくなった手をかざす。

すると廊下から聞きなれた足音が聞こえてきた。
長年聞いているこの足音は変わらない。
耳をたててその足音を聞いているとその足音が近づき部屋の前に来るのが分かった。

「失礼します政宗様」

部屋の外の廊下から声がかかる。

「OK、入りな小十郎」

そう声をかけると真面目な家臣はすっと障子を横に引いて中に入ってきた
小十郎と共に入ってきた外の冷たい空気にぶるりと体を震わせる。

それに気が付いた小十郎は急いで障子を閉めると私に気が付き自分の羽織を私に羽織らせた。

「馬鹿、これじゃあお前の方が寒くなるだろうが。」

そう言って小十郎に羽織を返すと小十郎は「私より政宗様のお体のほうが心配です。私の事は構わず。」と言って再び私の肩に羽織を羽織らせようとする。
それを慌てて阻止すると私は「Ah〜〜!!」と言って小十郎の腕を引っ張って自分の後ろから抱かせる形にした。
背中に小十郎の体温を感じる。

「こうした方がどっちも温かいだろうが・・・」

後ろに居る小十郎の胸元に顔を埋めるようにすると小十郎は優しく「そうですね」と言って私を抱えなおした。

「で、小十郎俺に何のようだ?」

と言うと小十郎は「あっ」と短い声を漏らした。
私が「な、なんだ?」と言うと小十郎は不機嫌丸出しの表情で「実は、甲斐から真田幸村が来ておりました・・・・。」
と声を低くしていった。

小十郎の豹変に私は、はは・・・と乾いた笑いを出した。
どうやら幸村は客間で待っているらしく小十郎はそれを私に仕方なく報告しに来たと。

私は「はぁ」と溜息をついて立ち上がると小十郎と共に幸村(おまけで佐助も)の居る客間へと向かった。

バンッと客間の襖を開けるとそこにはお茶と茶菓子を美味しそうに頬張る幸村が居た。
その横には「あはーーっ」と言って苦笑いを浮かべている佐助も居た。

私はまた溜息をついた。
後ろの小十郎の殺気が痛い・・・・。
後ろを振り向けば小十郎が落ち着いた様子で幸村を見ていたがその瞳が怖い・・・。
小十郎は幸村が嫌いだからなぁ。
そんな小十郎をとりあえず無視し、私は幸村に話しかけた。

「幸村、今度は何の用で来たんだ?また手合わせか?」

幸村の前に座り項垂れるように言う。
すると幸村は驚いた表情をして「なんと!政宗殿は人の考えが読めるのでござるか!?」と真剣に驚いていた。

「馬鹿かお前は。こうも毎回毎回来られてりゃあ嫌でも分かるっつーの。」

と言って幸村ではなく佐助を見た。
手前は保護者なんだからきちんと躾ぐらい城よ・・・。という意味を込めてだ。
佐助は私に気づかないフリをして一生懸命幸村の口の周りについた菓子クズを取っていた。

私の斜め後ろに小十郎も座る。
佐助もちらりと小十郎のほうを見たがすぐに青ざめ幸村と俺を見た。
残念ながら私の位置から小十郎の顔は見えない。

小十郎。一体どんな恐ろしい表情をしているんだ。
考えるだけでも恐ろしい。
そんな時になんとも空気の読めない幸村は立ち上がり「そうと決まれば早速お手合わせを致しましょうぞ!!」と言って私の手を引っ張った。

「お、おいっ!!」

「旦那っ!!」

青ざめる私と佐助。
その時、私の斜め後ろ。つまり小十郎の居る辺りから爆発音の様な物が聞こえた。
恐る恐る振り返ると、小十郎の横にある壁が綺麗になっていた。
綺麗・・・というのが。何故か部屋に居るのに外の風景画見えるという・・・。素晴らしい状態に。
見れば小十郎の前髪が、はらり、と一房垂れた。
口元には笑みを浮かべている。その小十郎の表情に心臓が高鳴った自分はおかしいだろうか・・・。

「おい、手前その汚ねぇ手を離しやがれ・・・。」

そう言う小十郎に幸村はきょとんとしていたが隣に居た佐助が慌てて私と幸村の手を離させた。
流石忍び。対応がお早い事で。

「な、何でござるか片倉殿。某これから政宗殿とお手合わせを・・・。」

「手前に政宗様の相手はつとまらねぇよ。俺が相手してやる。」

にやりと不敵な笑みを浮かべる小十郎。
小十郎セクシーだ・・・。私はうっとり小十郎を見つめていた。
そんな私を見て佐助は私を化け物でも見るような目で見た。

小十郎は私の方に顔を向けると「待ってて下さいますよね、政宗様?」と言って
その黒い笑みのまま私を見た。
いつもとは違う、殺気を放った小十郎の瞳に私はもうメロメロだ。

「あぁ、俺待ってるから。」

そう言って小十郎の指に自分の指を絡めた。
小十郎も指に絡める。

(俺様もうやだ・・・・。)
この中でただ一人まともな忍び佐助が心の中でそう思ったとは勿論誰も気が付かなかった。

そして、また空気の読めない幸村が口を出してきた。

「片倉殿!!某は政宗殿とお手合わせしたいでござる!!」

その幸村の言葉に小十郎がぎろりと睨んだ。
「うっ」と言って少し怯んだ幸村だが負けじと「政宗殿!某とお手合わせしたいであろう!!」とあろう事か私に話を振って来た。

三人の視線が私に集まる。
いや、正直言うと手合わせはしたい。最近体動かしてないし。
だけど、ここでしたいって言うと小十郎の機嫌は最悪状態に・・・。
あ、けど、幸村に犬の耳と尻尾が見える。

「Ah〜〜〜・・・・・・」

私は考えた。考えて考えて考えた結果。

「じゃあ、幸村。お前小十郎と手合わせして勝ったら俺と手合わせしてやるっていうのはどうだ?」

我ながらいい考えだと思ったんだが・・・。
小十郎と幸村の顔を見ると納得したようで互いに頷きあっていた。
自分の考えが間違っていなかった事に安心しながら私は「じゃあお前等暴れて来い!」と言って二人を外に出した。

雪の降る中、雷と炎を纏わせて戦う二人。
そんな二人の様子を見ている私に佐助が近づいてきた。

「竜の旦那も大変だね。」

よっこらしょっ、と声をかけて私の隣に座る。
あ、馬鹿!!私の隣に今座ったら!!

「おい猿飛・・・手前も混ざるか?」

幸村と手合わせしている小十郎に見つかってしまった。
佐助は笑顔を顔に貼り付けたまま私を見た。私が首を横に振ると佐助は笑顔のまま瞳が潤んだ気がした。

極殺モードの小十郎に見つかり手合わせの中に混ぜられた佐助は先程の笑顔の表情のまま、ぼへぇとクナイを投げていた。
目は、死んだ魚の目。
やる気の無い、もう諦めている佐助の体に容赦ない小十郎の蹴りが入った。
最後に「末代まで旦那を恨んでやる」って聞こえたのは気のせいかな?
佐助、幸村のせいにちゃ駄目だよ。気を抜いて私の隣に来た佐助が悪いんだから。

勝敗は目に見えていた。
暫くすると小十郎は白い息を吐きながら戻ってきた。

「お帰り小十郎。」

そう言って小十郎に抱きつけば、たった今まで手合わせをしていた小十郎の体は温かかった。
汗をかいたのか小十郎の匂いが一段と強い。その匂いに、くらっとしながらも私は小十郎に抱きついた。
いや、抱きついたというよりはしがみ付いていた。

「全く、政宗様に近づくのも百年早ぇつーのに」
とぶつくさ言っている小十郎。
そんな小十郎を落ち着かせるように小十郎の背中をぽんぽんと叩く。

「あいつ等は勝手に帰っていくでしょう」

と小十郎は庭で倒れている二人、幸村と佐助を見ながら言った。

「さ、中に入りましょう。体が冷えていますよ」

小十郎に背中を押されるようにして立ち上がり部屋へと向かう。
本当に大丈夫かな?そんな心配をしていたのだが、あの二人なら大丈夫だろうと小十郎に押され部屋へと戻った。

「やっぱり小十郎は強いな。」

「あんな奴等に負けるほど俺は弱くありませんよ」

当然と言う様な小十郎。そんな小十郎に「そうだな」と返事を返すと私はもう一度小十郎の極殺モードが見たいな、なんて思って
小十郎の前髪を下ろしてみたり・・・・・。
したら、小十郎に黒い笑みで見つめられて心臓が痛くなった。

(私も、小十郎には勝てない、か。)

極殺モードの小十郎の頬に手をかけ、私は小十郎の首に顔を埋めた。
耳元で小十郎の「寒いですか政宗様」と言う過保護の言葉を聞きながら。








(俺様ちょー可哀相)
(次こそは必ず勝って見せますぞ片倉殿ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!)
(旦那五月蝿い)


完!!

.

意味わかんなくてごめんなさい。
そしてデジャブでごめんなさい。
書いてから気が付いたんです。あの、言い訳させてください!!
寒いから、寒いから人肌が恋しくなってつい!!本当にごめんなさい!!
リクエストしてくださった蓮愁様。ここまで読んでくださった皆様。

申し訳ないです・・・。
やまなし、おちなし、いみなし。です。
ごめんなさい。


蓮愁様!!
本当にごめんなさい!!

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