通りすがりのニンフ

□人参でも食べなさい!!
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朝起きた。

までは良かったんだ。

起きた時に感じた頭の違和感。何かがおかしいと寝起きながらに思った。
寝起きで頭が追いつかない中、考えてそれでも分からなかったから頭に触れてみた。

たんこぶでも出来たのかな??なんて考えて頭に触ったのだが考えが甘かった。
頭に触れたとたんふわふわした物に手が触れた。びくっと肩を震わせた。
恐る恐るもう一度頭に手を近づける。

ふわっと手に何かが当たった。ふわふわしていて暖かい・・・それでいて・・頭から取れない?????

取れない??え、取れない??ゴミじゃないの??
両手でぐいっとそれを引っ張ったが痛くて取れなかった。
涙目になりながら鏡を覗くとそこには頭から兎の耳を頭につけた私の姿がそこに映っていた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

城に響き渡るんではないのかと思うほどに出た私の悲鳴を聞きつけて小十郎が
「どうしたのですか梵天丸様!!」と言って私の部屋の障子をスパ―ン!!と開けて入ってきた。

私はそんな小十郎にがばっと涙目のまま抱きついて顔を押し付けた。

「こ、小十郎!俺どうしよう・・。」

と泣きそうになりながら言う。

「・・・・・・・・・。」

しかし、いくら待てども小十郎の声がしない・・・・。
普通こんな私の様子を見たら「ぼ、梵天丸様!その頭は一体どうなされたのですか!?」ぐらい反応してもいいのではないのか??

小十郎の胸元から小十郎の顔を見ると、小十郎は、頬を赤く染めて私をガン見していた。

え、私の心配しないの!?そこなの!!頬染めるところなの!?

私がいつまでも小十郎を見ているのに小十郎も気が付き「コホン」と咳払いを一つして

「梵天丸様、その可愛らs・・・・兎の耳はどうなされたんですか!?」

私の両肩を手で押さえ私の顔を見ながら言う小十郎は、微かに、口元が、微笑んでいた。

・・・小十郎・・・・。

どうやら小十郎のストライクゾーンだったらしい。
本音を隠しきれていない小十郎に私は、小十郎は大丈夫なのだろうかと心配してしまった。

まぁ、そんなこんなで落ち着きを取り戻した私達は向かい合って話し合った。

「小十郎、この耳は一体何なんだよ」

私は頭から生えている兎の耳の片方を左手で掴み右手で撫でた。
ふわふわしていて気持ち良いんだけど。こんな兎の耳をつけた武将なんてなんか締りが無い。
こんなんじゃあ兵達も着いて来ないよ。

「うぅぅっ」と唸って涙を堪えていると目の前の小十郎が後ろに倒れた。

「小十郎!?」

私は慌てて小十郎に近づき小十郎の顔を覗き込んだ。
頭を打ったのか小十郎は手で頭を押さえていた。
私は小十郎の手を退けるとたんこぶが出来ていないか調べ、出来ていないことを確認すると頭を撫でた。

「梵天丸様・・・」

弱々しい小十郎の声が聞こえたと思ったら頭に小十郎の手が回され胸元に顔を押し付けられた。

いきなりの事に抵抗できずそのまま小十郎の胸元に倒れこむ形になった私は顔面を小十郎の逞しい胸板にぶつけた。

鼻は赤くなったであろう。鼻をぶつけた事によりさらに涙が出てきそうになった。
そのまま小十郎の顔を見ると小十郎は何処か遠いところを見ていた。

「梵天丸様」と小十郎がまた私の名前を呼んだ。

「なんだ?」

「梵天丸様は小十郎を殺す気ですか?」

「はぁ!?」

「とりあえず、小十郎の作った人参を食べて下さい」

「ちょっ、小十郎!!」

「そういえば兎は寂しいと死んでしまうんでしたよね?気をつけませんと。」

「落ち着け小十郎ぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

駄目だ、小十郎が壊れてしまった・・・。

「何を言ってるんです梵天丸様。小十郎はいつでも落ち着いていますよ??
大丈夫です。梵天丸様に決して寂しい思いはさせません。」

真剣な顔をしていってくる小十郎に思わずときめいてしまったが、「違う!」と言って私は小十郎の両肩を掴んで上下に激しく揺らした。

小十郎が正気に戻ったのは大分後の事だった。やっと真剣に私の耳について話し合うことになった私達は
喜多にも事情を話し、今日一日私と小十郎は用事があるので部屋から出れないと皆に話してもらった。
ただ、父上には話した。父上は話を聞くと執務の仕事を放り投げ私の部屋に入ってきた。

「梵天丸!!」

入って来た父上は「ぐはっ」と声を出して華麗に宙を舞って庭に落ちた。

「父上ぇぇぇぇ!!」
「輝宗様ぁぁぁ!!」

慌てて父上の下へ向かい小十郎が父上を抱き起こすと父上は小さな声で「ぐっじょぶ」と呟いた。

ああ、私が教えた英語。使ってくれたんだ・・・。

「輝宗様!?、ぐっじょぶとは一体どういった意味なのでしょうか!?」

がくがくと体を揺する小十郎。
やり残した事はもう無いという様な綺麗な顔をした父上。

え、ちょっと、なんだこれ。
意味わかんないんだけど。
なんなのみんな!!真剣に私のこの状態のことを話し合ってよ!!
もし、このまま私が元に戻らなかったらどうするんだよ!!
伊達家次期頭首どころじゃなくなるんだぞ!!!

よろよろとした足取りで小十郎に肩を貸してもらいながら部屋に向かう父上。
その前を歩く私。後ろを見ていると父上と小十郎が真剣な顔をして話し合っていたのでやっとこの深刻な状況を分かってくれたか、と安心した。
部屋に座り、父上が口を開いた。

「梵天丸」

「はい、父上」

真剣な表情の父上に少しびくびくしながら私は返事を返した。

「とりあえず人参を食べてくれないか?」

「お前もかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


・・・・・・


結局、私の兎の耳は一晩寝たら直ってました。安心した私と裏腹に
残念そうに「くっ」と拳を握り締める二人にイラッときたのは当然のことだろう。

なんで耳が生えていたかというと、それはこっち側の事情ということで(笑)

まぁ、そんなこんなで、新年明けましておめでとうございます!!




.


はい!!なんだか今回はいつも以上にぐだぐだになってしまいました・・・・。
紫瀞さんには申し訳ないです・・。
今回は紫瀞さんのリクエスト「梵天丸に兎の耳が生える!!」です!!
兎の耳とか想像しただけでも可愛いですよね!!梵ちゃんww(ハァハァ

おおっと、本音が!!失礼しました!!
ここまで読んでくださった皆様、リクエストしてくださった紫瀞さん!!ありがとうございました!!!

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