通りすがりのニンフ

□お城に泊まろう!!
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サイト一周年記念&50話記念!


友情出演、フィジカルの安菜様「どうせ私は」から虹、ムニル、卯之助、藍、翠。





今日は何もない平穏な日だった。
朝日がきらきらと輝き、きれいな一日の始まりだった。
小十郎が私を起こしに来て、着替えをして、朝餉を食べて。そして、これから何をしようかと考えた。

外を見れば山が紅葉を終え木が丸裸になっていた。つい最近まではあんなにたくさんの葉をつけていたのにな。なんて考えて少し悲しくなった。


これから本格的に冬が始まる。冬はもう9回体験した。寒いのはわかっている。
だが、今年の冬はきっと昨年より温かいものになるだろう。
だって、私には小十郎という大切な存在が生まれたから。
それに、父上に喜多も私を受け入れてくれる人が居る。
そう思うだけで自然と笑みがこぼれた。

「梵天丸様、なんだか楽しそうですね」

微笑んでいる私を見て小十郎が嬉しそうに言った。

「ああ、楽しいな」

「楽しいと思えるのはいい事です」

そう言って小十郎は私の頭を優しく撫でる。今日は喜多が居ないから一日中小十郎と一緒だ。私は小十郎の懐に入り込んだ。
頭上から小十郎の笑う声が聞こえた。

「小十郎、山に行かないか?」

「山?何でまたそのような所に」

小十郎は驚いた。そりゃあそうだろう。いきなり山に行こうなんて。

「なんだかなぁ、冬の山に入ってみたくなったんだよ」

と私が言うと、小十郎は少し考えてから「梵天丸様がそう仰るなら参りましょうか」
と、簡単に許しをもらえた。
そして、私たちは父上、輝宗に報告してから寒くないように一枚多く羽織って外に出た。

滅多に出たことのない外。
外は私にとって広く大きすぎる世界だ。だが、段々とこの世界も知っておかなくてはならない。将来の為にも。

私と小十郎は山を見て、植物を見て、その他にもいろいろな話をしながら歩いた。
と言っても小十郎がほとんど話しているのだが。

少し休んで、どれ、そろそろ行こうかそう思って腰を上げた時小十郎が鋭い目をして辺りを見た。
私は小十郎の変わりようを見て少し驚いたのだが、小十郎と同じく辺りを見ると木の影に人影が見えたのに気が付いた。

「小十郎」

少し不安になりながら小十郎の名前を呼んだ。
小十郎は私を見て「大丈夫ですよ」と微笑んで再び顔を上げた。

「出て来い」

ドスのきいた声だ山に響いた。
小十郎の声を合図に汚い身なりをした山賊達がわらわらと出てきた。数にして数十人。
山賊達はいやらしい笑みを浮かべて私達を見ている。気持ちが悪い。

「おい」

リーダー格の男が言った。

「金目のもんとそのぼうずを俺達に寄越して貰おうか。そうすればあんたの命は助けてやる」

自分の事を指されどきりとした。きっと私を売るつもりなんだ。そう思うとさらに吐き気が増した。

「ふざけるな!!この御方は誰にも渡さねぇ!!」

そう言って小十郎は腰に差している刀に手をかけた。
駄目だ、小十郎一人なら大丈夫だろうけど私を守りながら戦うなんて、この人数では無理がある。
小十郎もそれを分かっているのか、どうしようかと考えているようだ。
私は、なんて自分が弱くて愚かなんだと罵った。

「行け」

リーダー格の男が言った。
後ろの山賊が一斉に私達に襲い掛かった。
その時。

私達の目の前の山賊の頭が吹っ飛んだ。

「・・っ!?」

噴き上げる血飛沫が雨の様に全身に降りかかる。
それでも私の全身が血で濡れなかったのは目の前の女の人が私に傘を差してくれたからだ。
左腕に大蛇を巻きつけ、大剣を右手に持っている女の人は全身に血を浴びて、口元には笑みを浮かべていた。
まるでその光景に満足しているかのように。

「っ、お前は!!」

そう叫んだ男の顔も女の人が握っている大剣によって頭を吹き飛ばされた。
ごろん、ごろんと頭が足元に近づいた来たのを女の人が足でぐしゃりと踏み潰した。

「山賊狩りだ!!」

ほかの誰かが死んだ山賊の意思を受け継ぐようにそう叫んだ。

そこからは早々と済んだ。
いつの間にか居た私と同じ年くらいの男の子と双子の女の子が出てきて山賊を次々に殺していく。
男の子に関してはそりゃもう楽しそうに。その点女の子達は無表情で的確に。
そして、あの左腕に大蛇を巻きつけている女の人はと言うと
馬鹿でかい大剣をまるで木の棒の様に簡単に振り回し山賊達を虫の様に潰していった。
女の人だけでほとんどの山賊を殺していった。
そして、最後の一人をいとも簡単に殺し、女の人は「ふぅ」と息を吐いた。

そして、未だに何が起きたのかはっきりしない私と小十郎の方を向いた。


「あ、あの、お怪我はございませんか」

そう言うなり女の人はわたわたと慌て、「虹、腰低すぎと双子の女の子にバシンッと叩かれ「うげぇ」と声を漏らした。

「はぁ」、と私と小十郎は気のない返事を返した。何なんだこの女の人は、戦っていた時と今ではぜんぜん印象が違う。
戦っていたときはもっと、恐ろしい、妖しい雰囲気だったのに
今こうして子供にバシバシ叩かれている光景を見るとさっきと同一人物なのかと目を疑いたかった。

小十郎がはっとして私の目線まで腰を落とし「大丈夫で御座いますか梵天丸様」と顔が青白くなりながら言った。

「大丈夫だ、何もない」

そう言うと小十郎は安心して胸を撫で下ろした。
その時その女の人が「梵天丸?」と小さく呟いたのを聞き逃さなかった。
くるり、と振り向き女の人を見ると顎に手を当て「ああ、この子が政宗さんになるのか!」と言った。

はっ!?と私は耳を疑った。
今この人は私を見て「政宗」と言った。この世界の人間は梵天丸と言う名前は知っていても政宗という名前は出てこない。
もしかして、いや、まさか。

私は左腕に巻きついている蛇を無視して女の人の腕を引いて私と目線が合うところまでしゃがみ込ませた。

「うわっととと!!ななななな、何!?どうしたの梵天丸君!!」

・・・・顔がにやけているのは気のせいか??
まぁいい。私は、はらはらしながら私を見ている小十郎や、目を丸くしてみている子供を無視して女の人の耳元で言った。

「お前まさか平成から来たのか?」

そう言うと女の人は目を丸くして私を見た。


「じゃあ・・・梵天丸君も・・・?」

私は「ああ」と言って頷いた。


「小十郎」

「は、はい、梵天丸様」

「この者達を城に連れて行くぞ」

「梵天丸様!?」と言う小十郎の声と驚いた女の人の声はほぼ同時だった。



――――――




女の人を城に呼び私の部屋に今、女の人(虹というらしい)と双子の女の子(藍と翠)男の子(卯之助)と大蛇(ムニル)と私と小十郎と父上が向かい合うように座っている。


「梵天丸を助けてくれたってな。心から感謝する。」


そう言って父上は深々と頭を下げた。


「いやっ!!ホント頭を上げてください輝宗さん!!私はなんていうか山賊を殺すのが仕事ですから!!
それに感謝されるようなこと一つもしてないんですよ!!梵天丸君に人が死ぬところ見せちゃったし・・」

と、虹は申し訳なさそうに言った。

「いや、お前達が梵天丸を助けた事に変わりはねぇ。
梵天丸は俺の大切な宝だ。感謝してもしきれねぇ。」

父上はそう言うと隣に座っている私の頭を優しく撫でた。
私も父上の手に逆らうことはせず父上の手を受け入れた。

「父上お願いがあります」

「なんだ梵天丸?」

私はあまり父上にお願いをしないので父上と小十郎共々驚いた顔をした。

「俺の命の恩人でもあるこの者達を城に泊まらせてもいいでしょうか?」

「えぇ!!」と言う驚いた虹の声に続き「わーい!!僕ここに泊まりたい!!」と言う卯之助の声
「私達は虹が泊まると言うなら泊まる」と言う双子の藍と翠。

父上は心配そうな顔をした。まぁ、相手は山賊狩りっていう野蛮な仕事だし。
相手の事もよく知らない。もしかしたらこれも相手の計画のうちなのか。等と考えているのだろう・・・・。


「父上」

「ああ、何だ梵天丸」

未だに難しい顔をしている父上に話しかけた。

「この方達は大丈夫ですよ」

私はそう言った。何故だか大丈夫だと思った。ただそれだけで何の根拠も無いけど。
だけど、この人は大丈夫だと思った。

「・・・・・分かった。」

父上がやっぱりどこか納得いかない様子だったけどそう言ってくれた。
私は虹達に顔を向けた。

「勿論泊まってくれるよな?」

そう言うと虹は「う〜〜ん」と唸ってから笑顔で「泊まろっか!!」と卯之助達に言うと「うん!!」と言う元気な声が聞こえた。
そして虹が私の方を向いて笑顔で言った。


「大人一人子供三人ペット一匹でお願いします!!」

私もつられて笑顔で

「了解した」

と言った。




こうして城には奇妙な人達(+α)が泊まることになった。











.


なんか続くみたいです。
・・・あれ?終わらせるつもりだったのに続いちゃった☆
と言うことで、これから番外編かそこらで続きを書きます。

ここまで呼んでくださった皆様、コラボを許可してくださった安菜様、有難う御座いました!!

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