通りすがりのニンフ

□冬の必需品は温めるのが仕事だろ!
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吐く息も白く火鉢が手放せない季節になった。手を擦り合わせても悴んだ手は温まる事を知らない。
真っ赤になった手に息を吹きかけ必死に寒さに耐えようとする人の姿が目に付くのが多くなってきた。

だが、こんな風に寒い日は嫌いじゃない。政宗はそう思っている。たしかに、毎日寒いと嫌になるが、前向きに考えればいいことだってたくさんあるのだ。
煙管をぷかぷかふかして政宗はにやりと笑った。

お世辞にも大きいとは言えないこの自分の体をすっぽり隠してしますほど大きな体をしている小十郎の膝の上に座りながら政宗はこの寒さを満喫していた。

「寒いな小十郎」

「左様でございますね。体を冷やさないように気を付けなさらないと」

背中に小十郎の体温を感じながら政宗はまた、今度はふわりと笑った。
その小十郎の体に顔を埋めて小十郎の匂いをさらに近くに感じた。
小十郎の匂いと、温かいその体温が政宗には気持ちが良くて気持ちが良くてついつい寝てしまうのは仕方が無い事だと思う。

それなのに小十郎は「仕事はどうなさったのですか!?」と怒鳴るもんだから・・・。
しょうがない事だと反撃すれば逆切れだと思われ、いや、これは逆切れなのかもしれないのだが・・・。、まぁ、兎に角酷い。
小十郎の腕の中にいて寝るなというほうが無理に近い事だろう。

そんな事で現在進行形でちゃんと仕事はしているのだが、眠気との戦いはいまだ両者とも譲らない。

「小十郎・・・・」

「駄目ですよ」

「まだ何も言ってないんだが」

「どうせ休ませろとか言うのでしょう。この書類が終わるまでいけません」

「・・・堅物」

「ええ、ええ。なんとでも言ってください。それで貴方様の気が済むのならいくらでもどうぞ」

「バーカ」

「・・・・」

「アーホ」

「・・・・」

「おたんこなす」

「・・・・・」

何の反応も示さない小十郎に悪口(?)をいい続けている私は馬鹿みたいじゃないか。

「ケッ、ノリがわりぃな」

しょうがなく、嫌々ながら、渋々と。仕事を進めていく私。
しかし、今回は意外と早く終わりそうですぐに休めるかもしれない。
そう考えると頭は単純で、そのまま一気にスピードアップして一気に書類を終わらせた。
完璧に終わった書類を自慢げに小十郎に見せる。

「これで文句はねぇだろ?」

「さすが政宗様です」

「じゃあ、御褒美でも貰うか」

そう言って私は小十郎に正面から抱きついた。小十郎もそんな私の行動に正面から両手を広げて受け止めてくれる。
背中とは違った正面からの小十郎の体温を感じて私は目を細めた。

その時であった。庭の方から馬鹿でかい声で自分の名前を呼ばれた。
折角の幸せな時間を奪ったこの声の張本人を知っている。
私は名残惜しいが小十郎から離れて戸を勢いよく開くと目の前の庭には自己主張の激しい紅の服を身に纏った男が自分を見ていた。

「政宗殿!!某とお手合わせ願いたい!!」

この寒い日になんとも寒そうな格好ではあるが、暑苦しいその彼。

「幸村・・・・・。」

「ちょっ、ダンナってば!!だから言ったでしょちゃんと事前に行くことを伝えないと駄目だって!!」

そこに幸村を庇うように横から入ってきた忍びなのに全然忍べていない服装の猿飛佐助。

「おい猿。犬には首輪でも付けやがれ!!それと、しつけもきちんと済ませてから俺の前に出すことだな!」

「だから俺様猿じゃないってば!!何回言えばわかるの!!」

まったく、こいつらが来るといつも騒がしい。はぁ、と溜息を付くと私の前に小十郎がスッと出てきた。

「お前ら、政宗様は今仕事を終わらせたばかりなんだ。お前らみたいに毎日暇じゃねぇもんでな。
てな訳だ、今日はさっさと帰れ。」

さっさと、帰らせようとする小十郎に、幸村と佐助は涙目だ。
小十郎は本当に私以外だと容赦しない。
遠いところ遥々俺のために会いに来たのにすぐに帰れはさすがに酷いだろう。
残念ながら私はそこまで鬼じゃない。

「いいじゃねぇか小十郎。
幸村、今日は手合わせできねぇが一緒に休息としねぇか?甘いもんもあるぜ?」

そう言えば幸村は目を輝かせ口からは涎がだらしなく流れている。

「政宗様!」

あまり気が乗らない小十郎に説得するもやはり気が乗らないようで小十郎の周りの空気がピリピリとしてきた。

「そんなに怒るなよ。あいつらだって可哀想だろ?」

「・・・しかし、目的は貴方様との手合わせであって、その目的が達成されないと分かればすぐに帰るのが礼儀ではないかと・・」

「じゃあ、俺があいつらと休息を共にしたいと言ったら良いのか?」

「・・・そうなりますね」

「よし、話はついたな、小十郎甘いもの持って来い」

「・・・はい」

渋々受け入れた小十郎。
小十郎が居なくなってから佐助が私に話しかけて来た。

「いいの?右目のダンナ凄い怒ってたじゃん!」

「俺がいいって言ってんだからいーんだよ!おめぇらは大人しく俺に招待されてろ!」

「はーい・・・。」

暫くしてから甘いものを持ってきた小十郎。どうやら大福を持ってきたようだ。
そこに、佐助が持ってきたみたらし団子も一緒にいただく。

みたらし団子は佐助の手作りのようで美味しいと素直に言えばとても喜んでくれた。
その間の小十郎の不機嫌の悪さは最悪だったが。

お菓子を楽しみ、そろそろ帰ると佐助の方から持ち出したので互いに気持ちよく見送ることが出来た。

帰ったあと、少し寂しくなった部屋に座り小十郎と向かい合った。

「はっ!機嫌がわりぃな小十郎」

「いえ、そんな事ないですよ。小十郎は普段通りです」

どこをどう見たら普段の小十郎に見えるんだ。クククッと私は小さく笑った。
本当にこいつは私のことになるとすぐに顔にだすんだから。だが、そこが嬉しくて安心する。

「寒いな小十郎」

「左様ですね」

「こんな日は体を冷やしちゃいけねぇんだよな?」

そう意地悪に言って私は両腕を広げた。
私の行動に悟った小十郎は、さっきとは打って変わって笑顔を見せながら「そうでございますね」と言って私をその腕の中にすっぽりと埋めた。

「こんなにも体が冷えてしまわれて・・」

「だからこうして温まってんだろ?」

「そうでございますね」

そう言って小十郎は唇を両端に上げた。

「これからもっと寒くなりますからお体を温めませぬと」








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はい!!ここまで読んでくださった皆様とリクエストしてくださった杏様ありがとうございます!!
今回はニンフの梵天丸から政宗へということで、本編より一足先に政宗を書かせていただきました!!
友情出演で佐助と幸村もちょこっと出てきてます!!

よく分からなかったと思いますが、設定的には、まだ女だとばれてなく、二人(政宗と小十郎)は付き合っておりません!!

なんだかよくわからない作品になってしまったようで申し訳ないです・・・。
ほんとすみません!!

こんな作品でよかったらどうぞ!!
それでは最後にもう一度、ありがとうございました!!

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