通りすがりのニンフ

□夜の雨の中は心地よくて。
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雨が目立つこの季節、私は外の雨を眺めていた。夜の雨。激しくもなく、かといって優しくもない雨。私には心地よい雨だった。
私の後ろに控えている小十郎は雨の冷たい風で風邪を召さないか冷や冷やしている。そんな小十郎を無視しつつ雨を食い入るように見つめる。

決して雨が好き。と言うほど好きではないのだが今は雨を見ていたい気持ちだった。

暗闇の中の雨はどんよりとして重たい雲を纏っている空を洗い流すように休まず降り続けている。
月はその重たい雲にかかってしまってその姿は見当たらない。


「梵天丸様そろそろお体が冷えますでしょう・・・・。障子を閉めさせてもよろしいですか?」


ほら、やっぱり小十郎は心配性だからそろそろ言うと思った。


「やだ。」


私は短く小十郎にそう言い放った。そう返事をされては小十郎は困ったものだろう・・・。私は困るのを知っていてわざとそう言った。

目を閉じれば雨の音が鼓膜を響かせて気持ち良い。そっと私は瞳を閉じた。


「梵天丸様・・。」


小さく呟く小十郎の言葉は困惑と諦めが聞き取れた。
瞳を閉じていることで目の前は暗闇。その中に雨とは違う音が私に近づいてきた。
その音は小十郎の足音。小十郎のものだから別に気にはしていなかったけどいきなり自分の体が重力に逆らって浮いたのには驚いた。


「えっ!?」


気付いたら私は小十郎の膝の上に座らされていた。腰周りにはしっかりと小十郎の腕が回されている。


「おい、俺を下ろせ!!」


恥ずかしさやらなんやらたくさんの感情が私の頬を赤く染めた。
腕を振り上げ私の腰の周りにある小十郎の腕を叩こうとしたが私の両腕はその小十郎の腕によって阻止された。


「季節の変わりやすい天候、それに雨の冷たい風。梵天丸様のお体が冷えて風邪を召されてしまいます。」
「それとこれ、どういう関係があるんだよ!」
「小十郎がこうして梵天丸様を抱きかかえる事によってお体が冷えないようにするのですよ」
「なっ!!」


嫌でしたら障子を閉めさせていただきます。そう言う小十郎に、解った障子を閉めよう。と言うのは負けた気がするのでそのまま私は小十郎の膝の上に座っていた。
負けた気がする。と言うのもあるが本当は小十郎に抱きかかえられて悪い気がしなかったから。
これが昼間だったらすぐに小十郎からその体をどけて部屋の隅に向かうところだが今は夜。
暗闇の中ともあって別に大丈夫か。という気持ちが生まれていた。

小十郎は温かくてそして酷く落ち着いた。
自然と瞳が重くなってくる。そんな私を見て小十郎が「もう寝具によこになりますか?」と言ったが私は首を横に振った。

普段と違って大人しい私に小十郎は微笑んで頭を撫でた。
止めろと言いたかったのだが口が動かない。口だけではなく体も石のように動かない。


小十郎が私を抱えなおし私の背中を赤ん坊をあやす様にぽんぽんと叩く。
小十郎と雨の心地よさに私の意識は夢の中へと静かに入っていった。


せめて夢の中だけは素直になりたい。
夢の中だけは全てを忘れて・・・・・。





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はい、ここまで読んでくださいましてありがとうございました。
通りすがりのニンフの番外編。と言う事でしたが正直普段書いてるものがストーリー性がなく番外編だらけのようなものでしたので何を書けばいいのか解らなかったのですが
亜紀月さんの誕生日が6月22日と言う事でしたので6月22日の出来事を書かせていただきました!
・・・・6月22日?・・・話的におかしいと思っても6月22日だと思ってください!!

最後ですみませんがが亜紀月さん相互ありがとうございます!!そしてありがとうございました!!



6月22日の誕生花達↓

甘草(カンゾウ) 再生,悲しみを忘れる
ガマズミ 愛は死より強し・結合・私を見て
ダマスクローズ 美しい姿
セントポーリア 小さな愛
ネリネ(ピンク) 幸福な思い出
エレンジウム・ギガンチューム 無言の愛

花言葉をテーマとして書かせていただきました。

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