狐花は恋をする

□百鬼夜行のような・・・。(後編)
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堅苦しい挨拶も終わり、今は皆で宴会をして楽しんでいる。
先ほどまでの重苦しい空気はどこへいったのやら、皆酒を飲み、舞、世間話のどんちゃん騒ぎ。
私は一人人見知りと言う事もあり妖怪の長たちを見ていた。


その時一人の男の人が近づいてきた。


「妖狐の姫は楽しまねぇのか?」


そう言ってきたのは見た目20前後、右目に縦に傷があり青い瞳、青い髪をした男の人だった

私は右目だけ見て、政宗みたい・・・。と思った。


派手な着物、しかも青と黄色を基調としていているところと話し方からも、何処か政宗みたいだった。



「あら、楽しんでるわよ?」


私はそっけなく返した。

そんな私にすっと飲み物を渡す。ここにあるのは全てお酒だ。私はお酒は飲めない。

私はお酒を手で避けた


「私、お酒は飲めないので・・・・。」


そう言うとその人は驚いたような顔をした。


「酒は飲めないのか!?珍しい姫さんだな」


「そうでしょうか?」


飲めない人も居るのではないだろうか。。。と周りを見るが、皆御酒を美味しそうに飲んでいる。


やっぱり珍しい事なのだろうか?
私はしばし考えた。


私の隣ではその人が美味しそうに御酒を呑んでいる。
その人の髪の毛がサラサラと私の目の前に流れる。

妖怪だからだろうか。髪がキラキラ輝いているように見えた。


水のように青く透明感のある髪はこの妖怪の中でも他にないくらい綺麗だ。

私は思わずその髪に見とれていた。


「妖狐の姫。そんなに見られては照るんだがなぁ?」


私の顔をしたから覗き込むようにその人は私の顔を見てきた。

あまり働いていなかった私の脳内にいきなり流れ込んだその人顔に驚いて
私は小さな悲鳴を漏らし後ろに軽く後ずさりした


「驚かせっちまったようだな。悪い。」


その人は申し訳なさそうに笑うと、私の手を取った。


何をするのだろうと見ていると私の手に青い小石を乗せた。

小石は小さいながらも何処か不思議な雰囲気を漂わせていた。


「あの、これは・・・?」


「俺から妖狐の姫へ贈り物だ」


贈り物?
私はもう一度その小石を見た。
綺麗な色。しかも青。私は一目見て気に入った小石を返そうと言う気は最初っからなかったらしい


「ありがとうございます」


私は小石を手の中に収め今日はじめて初めてその人だけに笑顔を向けた。



するとその人は驚いたような顔をした。しかしすぐに顔を元に戻すと私に優しく微笑んだ。



「やっぱり笑顔が似合うと思った」



それだけ言うとその人は立ち上がり酒に酔い騒いでいる妖怪たちの中へ消えていった


私はその人の行った先をしばしの間見ていた。
直ぐにハッとなって顔を元に戻し、妖怪の長達に挨拶を交わし続けた。



・・・・


どのくらい時間が経ったのだろうか。妖怪たちは宴会を切り上げぞろぞろと列を成して帰っていった


私は玄関まで見送っていたが、最後の一人が帰ると、一気に疲れが出てきた。


ふらふらとする体を支えてもらいながらなんとか自分の部屋まで歩いた。


やっと終わった。

そう落ち着くのは早かったようだ。

部屋に着くなり私の周りに居た妖狐達は私の部屋に入り皆で頭を下げた。


まだ何かあるの!?


うんざりした気持ちで私は皆の頭を見た。
最近は頭を下げられるのに慣れてしまったようで、特になんとも思わなくなった。



すると妖狐のうちの一人の女の人が声を張り上げ言った。


「おめでとうございます姫様!」


おめでとうございます?私は何のことやらさっぱりわからない


皆一斉に頭を上げる。その皆の顔が笑顔でなんだか私はその笑顔に恐怖を覚えた。



「一体何のこと?」


私は不機嫌そうに言った。



「竜神様に婚約を申し込まれましたでしょう?」


竜神・・・?婚約・・・?
いや、されてないされてない!てか、竜神様って誰!?

私はたくさん挨拶をした妖怪の長たちの顔を一人一人思い返した、その時の会話なども思い返した


しかし、プロポーズされた記憶は無い。



「・・・一体いつ?」



私は恐る恐る聞き返した。



「姫様の懐に竜神様から頂いた小石がありますでしょう?
小石を誰かにあげると言う事はその人に対して好意を持っている。婚約。という意味があるのですよ」


私はそれを言われてはっとなった。なんで小石をくれたのかと思ったらそんな意味があったのか!

しかも、竜神様ってあの人だったの!?


何故かその人との会話が鮮明に思い出される。私は思わず発狂したくなった。



「竜神様に婚約を申し込まれるとは我等も鼻が高い!」


そう言ってその女の人は細い目をさらに細めて笑った。



「竜神様ってそんなに偉いのかしら・・・?」


さっきから、鼻が高いだの何だのって・・。


「はい!それはもう!!高貴なお方で誇り高い方ですよ!!
我等妖狐も竜神様以外の妖怪と比べると上の位ですが、竜神様は我等以上。

ですので、その竜神様に選ばれる事はとても素晴らしい事なのです!!」


と、言い切ると、その隣の女の人が私の前にすっと綺麗に漆塗りされた箱を差し出した。


縛られてある赤い紐を解くと中には竜神様に貰った小石のように綺麗な、黄色い小石が入っていた。


「婚約を申し込まれたら、婚約したいという気持ちを伝えるため小石を贈り主に渡します。
しかし一週間経っても小石を渡さなければ婚約は無しとされます」


と説明する。
私は正直婚約とかわかんなくって断ろうかな、とか考えてたんだけど
皆を見る限り絶対断れない。



私は変な汗が流れた。



「姫様この小石を竜神様に・・・」


そう言うが。私は少し躊躇った。だってあってすぐの人と婚約なんて・・・。
よくわからないし・・・・。




だけど・・・。
こうして思い返すと悪い気はしなかった。
まだ人間として生きている間は政宗が大好きだった。この気持ちはいまだまだ変わらない。

竜神様と呼ばれる人は政宗様に似ていたしかっこよかった。
そんな人から婚約をされて、断る事が出来るだろうか?



私はその小石を取った。


「判りました。竜神様にこの小石を贈ります」


私がそう言うと皆安堵の息を漏らした。
皆私が断るのではないのかと冷や冷やしていたのだ



「しかし、この小石を渡すのは一週間後。ギリギリに渡します。」


そう言った私に反論する人は誰も居なかった。


そうは口では言ったが渡すか渡さないかわまだわからない。
私は言ったいどうしたら良いんだろう


こうして私は一週間までにこの石を渡すか渡さないか決めなければならなくなった。



複雑な、それでいてなんともいえない気持ちが私の心を埋め尽くした。

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