この恋を忘れた頃

□奥州にて龍が通る。
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馬の駆ける音が聞こえる。

刀かぶつかる金属音が聞こえる。

泣き叫びぶ声。雄叫び。叫び声。

いろんな音が戦場にはある。


今、ここに一つの戦場の地となっている平地があった。
その戦場からその音が聞こえる


その戦場に戦いの先を見据える男がいた。
その男は崖の上から馬に乗り戦場をさもつまらなそうに見ている。


「つまんねぇな・・・」


男は眉間に皺を寄せため息と共に言った。


戦の決着はもうついている様なもんだ。どっちに転がったって負ける事は無い。

そう男は考えていた。


ふっと、男は空を見上げた。

清々しいまでの青空。
青空なんて自分にはもったいない。

雨でも降りゃあいいのに。


不意に視界に入ってきた鳥がその青空を自由に飛んでいた。


「いいなぁ」


そう呟いた言葉は鳥に向けられてか。
鳥の自由に空を飛んでいる姿を見て羨ましいと思ったのか

はたまた、鳥のその自由気ままな飛び方を羨ましいと言ったのか。

何にもとらわれる事の無いその姿。





「政宗様!!」



後ろから低い声で自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。
それと同時に馬の足音も聞こえてきた

『政宗』それがこの男の名だ。



「何だ小十郎」


政宗は首だけを小十郎という男に向かせた。


「大将の首は討ち取りました。この戦も貴方様の勝ちにございます。」



告げられたのは戦終了の言葉。


「わかった。それじゃあ城に戻るとするか」



つまらない戦だった。



政宗は小さく呟いた。





城についてからも政宗の表情は変わる事は無かった。
戦に勝ったのに喜びもしない。



『政宗様ここのところ様子がおかしいよな』
『何かあったにちげぇねぇ・・』



足軽たちのそんな話し声も聞こえてきたが政宗はあえて何も言わなかった。



政宗自身も何故こんな風になってしまったのかわからないからだ


こうなってしまったのはここ最近の事だ。


政宗は一人部屋で何をするわけでもなく座っていた。


次はどこを攻めようかな。


そんなことを考えるが、まったくやる気が無い。


なんだろうな。刺激がたりねぇ・・・・・。



「政宗様」


そう言って入ってきたのは小十郎だ。

なにやら心配そうな顔をしている。

小十郎は俺の前に座ると俺の瞳を見ながら話し始めた。



「政宗様、何かありましたか?」



来ると思っていたその質問。


「いや、何もねぇ」


逆になさ過ぎる


「それでしたら何故ここのところ・・・・・元気が無いように見えましたが」


「そうだな」


俺はそっけなく返した


小十郎は難しい顔つきになった。
俺は何か言われる前にその場を立ち去った。

小十郎は追いかけてこなかった。


「俺が知りてぇよ」









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