通りすがりのニンフ
□鬼と空。
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寒さも残るこの季節に太陽の光が燦々と降り注ぐ縁側に私と弥三郎は二人座り互いに話しに花開いた。
私は小十郎の事、弥三郎はこれから前向きに生きていく事を。それぞれ話した。
長曾我部家にお世話になって五日後となった。
五日は長いようで短い時間だった。弥三郎とは話が合い五日後にはまるでずっと今まで一緒に過ごしてきたかのように打ち解けた。
冗談も言い合えるようにもなった。
弥三郎は私が女だと知っても私に対する対する態度を変えることは無かった。
それは私にとって嬉しい事だった。まぁ、女だから体を冷やすなとか言われるようにわなったが私の体を心配する事であって
女だから駄目だということは何一つ無い。
弥三郎は優しい。笑顔で全てを受け入れ、私の相談に乗ってくれた。
今後の事、奥州をどうするか、小十郎とはどういう態度を取ればいいか。
弥三郎は、私が小十郎に対する想いはlikeでわ無くloveだと言う事も知っている。
主従関係での恋に弥三郎も眉間に皺を寄せた。弥三郎は決して私の恋を賛成と言うわけではなかった、だが、出来るだけ応援するとだけ言ってくれた。
それだけでも私は嬉しかった。年の近い相談者が出来て、喜多にも父にも相談できずにいたこの胸のうちを誰かに話せて胸がすっきりした。
「弥三郎、俺の話を聞いてくれてありがとな」
そう言うと、白い歯を見せて弥三郎は「政宗が困っているんだもの当然の事よ?」と言ってくれた。
「弥三郎は兄貴肌だな」
「本当?」
「ああ、弥三郎は優しくて笑顔で、誰とでも仲良く出来きそうだ。」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
二人寄り添い、話をしながら私は空を見上げた。
空気が澄んでいるためか空が綺麗だ。雲も無い、青空だけの空。
「政宗は空が好きなのね」
不意に弥三郎が言ってきた。
「うん?」と言って私は空から弥三郎へと視線を戻した。
「いつも空を見ているもの」
そう言えば私は暇があると空を見ている気がする
「好き、なのかな・・・。」
うん、好きなのかもしれない。
「私なんとなく理由分かる気がするわ」
私が空が好きな理由??自分でも分からないのに弥三郎は分かるのか??そうだったら凄い。
私は弥三郎に「なんだ?」と聞いた。
弥三郎はもったいぶる様に「うふふ」と間を置いてから言った。
「空はどこでも繋がっているでしょ?」
だからじゃない?そう言った弥三郎に私は感動した。
ああ、そうかもしれない。空はどこでも、どんな場所でも繋がっているから。空の下に誰かは居るから。
なんて綺麗な答えなんだろうか。
「・・・そうかもしれないな」
私は静かにそう言って弥三郎に微笑んだ。
弥三郎も私に微笑んだ。
「たくさん人が生きているこの空の下、政宗に会えた事を私、誇りに思うわ」
「大げさ過ぎだろ」
「ううん、私を私に変えてくれた、私を受け入れてくれたのは政宗だもの。
政宗に会えて本当に良かった。」
ふわりと私の手に弥三郎の手が重ねられた。温かな弥三郎の手の温もりに私は「温かいな」と呟いた。
「ありがとう」
優しく力強く言われたその言葉は私の心を熱くさせた。
弥三郎にそんな事を言われて照れくさいのとくすぐったいような何ともいえない感じに私は黙り込んだ。
弥三郎はそんな私の心を分かっているのか何も言わずに微笑みながら空を見た。
「あと、誰に会うのかな」
遠い遠い空を見ながら小さく弥三郎が呟いた。
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短い・・・。ごめんなさい。