通りすがりのニンフ

□普通になってきた日常が壊れた日。
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私の一日は大体が同じことの繰り返しだ。今日もまた同じ日が繰り返されるものだと思っていたのだがその日はいつもと違った。
何が違うのかというと、朝一に父上に呼ばれた。小十郎抜きで。

最初聞いたときは何がなんだかわからなかった。それに小十郎が居ないなんて不安で不安でしょうがない。
しかし、父上だし、大丈夫か・・。そう思って私は父上の部屋まで来た。


「失礼します。」

そう言って私は父上の部屋に入る。
父上は部屋で本を読みながら煙管を楽しんでいた。仕事は・・・と、机を見ると見事に終わっていないのが見て分かる。
相変わらずだ、父上は。そう思って私は声を出さずに笑った。


「おお、梵天丸早かったな!」

そう言って父上は煙管と本を置いて私に近づき私の頭を撫でた。

「父上を待たせるわけにはいきませんから」

そう言って私はにこりと笑った。

「偉いな梵天丸は」

そう言って何度も何度も私の頭を撫でる。
それと、父上に褒められて嬉しくってまた笑顔になった。

「それで父上、話というのは・・・。」

私は自分から本題へと入った。
その瞬間父上の顔が少し曇ったのが気になった。

「そうだな・・話というのはだな・・」

そう言うと部屋の置くから誰かが出てきた。
その人はなんとも綺麗な、女の人だった。


「っ!?」


いきなりの女の人に私は動機が止まらなかった。心臓が激しく脈打つ。
私は父上の着物をぎゅっと掴んだ。父上はその上から私の手を包み込むように握り締める。


「話というのはな、この喜多についてだ」

「お久し振りですね梵天丸様」

喜多と呼ばれた女の人は私を見てにこりと笑い「お久し振り」そう言った。


「お、俺はお前のような奴知らない!!」

「いいえ、梵天丸様が小さい時お会いしていますわ」


普通小さい時と言われても覚えてるわけないだろう。
私は心底から嫌な顔を喜多とかいう女に見せた

「梵天丸は女が嫌いだったな」

そう言う父上。
私は首を縦に振った。


「喜多をお前の教育係とする」

さらりと言う父上に私は耳を疑った。

「父上!?」

父上を見ると父上は真っ直ぐ私を見ていた。


「梵天丸。これからの事もある。今のうちに女になれておいたほうがいい。な?」


悲しそうに言う父上に私はそれ以上何も言えなかった。

話が終わり、私は喜多とかいう女と一緒に部屋に戻る事になった。

父上の話によると喜多は小十郎の義姉となるらしく小十郎とは大丈夫らしい。
喜多はしっかりとしていてきっと梵天丸に生活に不自由なく、さらに学習の面でも大丈夫だろう。
これから小十郎には武術の面で私に教えてくれるらしい。


嫌だ



小十郎から離れていくようで、小十郎と会える時間がなくなりそうで嫌だった。
泣きたかった。しかも、よりによって私の嫌いな女。

だが、前ほど拒否反応は酷くは無かった。ただ、気持ち悪くなるというだけなのだが
それとは別に喜多は嫌だ。
もしかしたら小十郎の義姉ということに嫉妬しているのかもしれない・・。
私はそう考えた。


もうすぐ私の部屋に着く。着いたらこの喜多という人は何を私に言うんだろう。
怖いよ・・・。
そう思う私をよそに喜多はいとも簡単に部屋の襖をがらりと開けた。
襖の音がいつもと同じはずなのに私の中では襖の音が悲しく聞こえた。






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