狐花は恋をする

□黄色い小石は消えました。
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あれから竜神様は毎日私に会いにきた。
会いに来るたびに花だの何だの持ってきて私を喜ばせてくれた。
私はそんな竜神様にいつしか恋心を抱くようになってきたんだと思う。
竜神様の笑顔を見ると私も嬉しくなるんだ。
それと同じように私の笑顔を見ると竜神様も嬉しくなるんだって。


私は竜神様に会うのが楽しみでしょうがなかった。
竜神様が来るたびにすぐに竜神様のところに行った。
この数日で確実に私と竜神様の距離は近づいていったと思う。


竜神様と過ごす時間はあっという間に過ぎ去っていった。
そして期限の一週間。


私は竜神様と一緒に私の庭の中でも彼岸花がたくさん咲いている場所へと行った。
あたり一面彼岸花の赤い色が絨毯の様に広がっていた。


「綺麗だな」


竜神様はたくさんの彼岸花に驚いた様子だったが喜んでいるみたい


「でしょう?私のお気に入りの場所なの」


竜神様が喜んでいるのが嬉しくて私は笑うように言った


「・・・・花も綺麗だが妖狐の姫の方が綺麗だな
この花が妖狐の姫の美しさを引き出してる感じだな」


「竜神様ったらお世辞はいいですよ」


「お世辞じゃねぇよ!」


会話はいつもこんな感じ。
竜神様は口を開けば私を褒めるし口説いてくる。
しかし、そんな会話に慣れてしまえば楽しいものだ。


私達はしばしたわいのない会話をした。
その間竜神様の様子はいつも以上にそわそわしていた。
私はそんな竜神様が可愛くってわざと話そうとしない。


話に触れない竜神様。
時間が経つたびに顔はだんだん寂しいものに変わっていった


そろそろいいかな?



いい加減竜神様が可哀想になってきた。


「竜神様、婚約の話ですが」


私は自分から婚約の話を持ち出した。

私がそう言った瞬間、竜神様は強張った顔で私を見つめた。
私はそんな竜神様を見る。


そして懐から黄色い小石を取り出した。



これを渡せば竜神様と婚約。
渡さなければ破棄。



私は私をじっと見つめる竜神様の手を取って小石を手に握らせた。



「よろしくお願いします」


そう微笑んで竜神様に小石を渡した。


竜神様は驚いた顔を見せたがすぐに私の大好きな笑顔になった。


「ありがとな」


そう言って竜神様は私の手と小石を握り締め唇に寄せた。


「ぜってぇ大切にするから」


「ありがとう」


私は恥ずかしくなって竜神様の胸に顔を埋めた。髪がぐしゃぐしゃになっても気にしない。


竜神様は私の背中に手を回し抱きしめてくれた。



妖怪の結婚はどういうものなんだろう。
人間の結婚と似ているのかな?それともまた別なのかな?


私は竜神様の胸の中でそんなことを考えていた。


竜神様は私の事が好きで私も竜神様の事が好き。
私達が結婚すれば竜神と妖狐の人たちが喜ぶ。
私の選択は間違っていない。



間違っていないはず。
なのにこの胸の違和感はなんだろう・・・・。






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