狐花は恋をする

□どこまで想っているのだろう?
1ページ/1ページ

朝日が差し込める部屋で一人私は考えていた。
それはもちろん今手の中に握られている小石の事についてである。

私はため息をついた。
妖狐の姫になってからため息をつくのが多くなったと思う。まぁ、そんなことはどうでもいい。
今はこれをどうにかするかだ


手の中で黄色い綺麗な小石がコロコロと転がされる。

大丈夫まだ六日ある。
私はそう自分に言い聞かせた


女の人が私に朝餉を持ってきてくれたが私は半分意識の無いまま食べたので何を食べたか覚えていない。


皆が言うに竜神様ほどの良縁はもう望めないと言う。
実際あの後、竜神様のほかに天狗様や犬神様やらなんやらと縁談は来たのだが
皆その縁談は破棄しろと言う。


だから問題は竜神様だけ。

私以外の皆は私がもう竜神様にあげるものだと思っているからあげなければならないのだけど・・・。

これはつまり夫婦になるということ。
だから私はゆっくり時間をかけて考えたいのだが・・・・。


「やっぱり小石を渡さなきゃ駄目かな。」


私はそう呟いた。


私はふぅと息を吐いてから小石を引き出しの中にしまった。

まだ大丈夫。そう自分に言い聞かせて。



私は暫く小石の事を忘れようと思い散歩をしようと思った

今日は皆の言葉遣いや礼儀作法の練習はないし。


障子に手を触れたその時。障子がひとりでに開いた!・・・・のではなく
世話係の人が私の部屋の障子を開けたのだった。


私は驚いてその場で固まる。
その世話係の女の人は笑顔でで言った。


「姫様、竜神様が姫様に会いたいとの事で来られました」


「え!?」


りゅ、竜神様が!?私は思わず声が裏返った。
さっきまで私の頭の中を埋め尽くしていた人。ついさっき忘れようとした人。


「客間にお連れしましたので姫様も参りましょう」


なんとまぁ強引な・・・。

私に拒否権は無い。言ってはいないけどそう聞こえる。

私はしぶしぶ女の人の後を付いていった。
憂鬱。踏み出す足が重くなる。やだなぁ・・・。

色々な嫌な感情が私を取り巻く。歩いている時私がどれほどため息をついたことか。



客間に着いたので私はしょうがなく中に入る。
女の人は中に入らず外で待っているようだ。


中では竜神様が私を待っていて私が来ると笑顔で迎えた。
私はその竜神様の笑顔に思わずときめいてしまった。


私は心を落ち着かせて竜神様の前に座った。


「今日は何のようで参ったのですか?」


この間の話なら一週間後に伝えると言っていたはずですが・・・・。
と付け足した。


竜神様は困ったように笑った。


「いや、その話じゃねぇ。
ただ妖狐の姫に会いたかった。理由がそれじゃあ駄目か?」


そう言うと竜神様は私に顔をずいっと近づけさせた。



「!?そ、そうですか・・・・」


私は恥ずかしくなって顔をそらした


竜神様は私の髪に手を伸ばして、私の髪をすくうとその髪を唇に寄せた
顔が赤くなるのがわかった


私は何とか会話をしようとして話題を考えた。



「あの!」


私は声を張り上げる様にして言った。
竜神様は驚いた顔で私を見る。



「なんで竜神様は私に婚約を申し込んだのでしょうか?」


私は私が実際に気になっている事を言った。


竜神様はきょとんと言う顔になった。
私は言ってから変な事聞いちゃったかな?と軽く後悔したが
話はそらせたので、まぁいいだろう。



「簡単な話だ。俺が妖狐の姫に一目惚れしたんだよ」


と言って。と笑った。


「一目惚れ?ですか?」


私は思わず聞き返した。


「ああそうだ。俺は最初に一目見て妖狐の姫が気に入った。
そしてその後の妖狐の姫の笑顔にも惚れた。」



二目惚れか?
そう言って竜神様は今度は喉を鳴らすように笑った。


「なんて言うかな。運命を感じたんだよ」

ーー臭すぎるかこんな台詞?

そう言った竜神様の顔は無邪気な子供のようだった。









.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ