この恋を忘れた頃

□知りたくも無い感情。
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(政宗視点)



俺は煙管に火を付けゆっくりと口に煙管を運んだ。口の中から白い煙と独特の香りが出て部屋の中に流れる。


そして読んでいた本を閉じた。


大して面白くも無い本。

ここのところ最近面白い事など無い。俺はどうしたら良い?

そんなことを軽く考えてごろんと畳みの上に仰向けになって寝転んだ。



廊下の方から足音聞こえる。
この足音は小十郎だな・・・・・。なんて、ぼーーーっとする頭で考えた。


足音は俺の部屋の前で止まり声をかけられた。


「失礼します政宗様」



やっぱり小十郎だった。


小十郎はいつもよりも厳つい顔をして眉間に皺を寄せていた。


また小言を聞かされるな。


横にしていた体を起き上がらせると小十郎と顔をあわせるように座った。

こうでもしないとさらに小十郎の小言が増える。
既にもう学習した俺は自然と小十郎の顔色で態度を変える事かできた。



「政宗様、何故私が怒っているのかわかっていますね」


「Ah〜〜〜〜何故だ?」


手で煙管をくるくる回しながらとぼけるように答えて見せた。


小十郎の眉間の皺がより深く刻まれる。



「貴方様の縁談の事ですよ!政宗様ももう19。一国の主として正室が居なければいけません。
来る縁談は全て素晴らしい話ばかり。伊達家の名を世の中にさらに広める事もできますでしょう。
しかし、貴方様はどうして片っ端から断っていくのですか!?
この小十郎の口からは詳しくは言えませんが・・・・・・・・・」


長ったらしく言う小十郎の言葉など政宗には最初っから耳に入ってなどいない。


大体正室がなんだ。
女の名を使って世界に名を広めるような情けない事はごめんだ。


政宗はべぇと舌を出した。



「政宗様!!」



怒る小十郎。別に気にしない。くだらない話をする小十郎が悪いと考えている。



「女は嫌いだ」




小さく呟いた。しかし小十郎は聞こえた。
さすが地獄耳だな、なんて軽く馬鹿にした。

小十郎は何も話さなくなった。


それは俺の女嫌いの意味を知っているからだろう。

かつて俺の母親でもあった女。



思い出したら怒りがどこからか溢れ出た。
イライラする。


俺は手に持っていた煙管を小十郎と俺との間の畳に投げつけた。

小十郎は微動だにしない。



「しかし政宗様・・・」



俺がこんな思いをしているのにまだ言おうとする小十郎の顔面を思いっきり殴った。



小十郎の鼻から血が流れる。
頬には痣ができるだろう。



「俺にはお前だけで十分だ。それじゃあ駄目か?」



「・・・・・」


小十郎は鼻を押さえて黙った。



「俺は女なんかいらねぇ。娶る気もねぇ。ましてや女を想う気もねぇ

俺の側に居るのは俺の右目。お前だけで十分だろ?なぁ?」



俺は睨むように小十郎を見た。
小十郎も俺に負けない強い瞳で俺を見返す。



「小十郎は政宗様の将来。伊達家の将来のため。そして人を愛する喜びを知ってもらいたいのです」



「HA!!人を愛する喜びなんて知りたくもねぇ!!」


と言って吹き出すように笑った。
なんだかとても可笑しかった。何故だかしらねぇが笑いたかった。


「愛するねぇ。LOVEだろ?」


クックッと喉で笑う。


スクッと立ち上がると俺は廊下に出た。



「政宗様どちらへ行かれるのですか!」



「散歩だ気にすんな」


小十郎の顔を見ずに手だけヒラヒラと振ってやった。



そして俺は別にどこへ行くわけでもなく馬を走らせた。








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