たゆう

□銀河の儲け人
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お客さん?
いつものように座敷で昼寝をしていた太夫が目を覚ましたのは2時ごろであった。玄関から女将の声と、店では聞かぬ声とが会話をしていた。寝ぼけた頭で思い出してみれば、今朝、禿が嬉しそうに頭にさしてある簪を見せながら「今日はお店の人が来るでありんす!」とか何とか言っていたのに気がついた。お店の人がその時は何か分からなかったが、きっとその簪を買った店の人物なのだろう。しかしその簪はそこらへんの小間物屋で買ったものではなく、わざわざ宇宙から取り寄せた代物なんだとか。キラキラ輝いていたあの簪の一部は、辺鄙な星で出来ていたのかと太夫は納得する。

「(はて、あれが宇宙産なら”お店の人”というよりかは輸入先の人がきてるんじゃ……ん?貿易会社の人かな?)」

太夫の住む店の飾りは、昔から飾られているものもあるが、最近では宇宙から取り寄せられている綺麗な飾りが多くなっていた。禿がつけていた簪は「いつも世話になっているから」との相手方のサービスで譲りうけたものだった。感謝するのはこっちの方では、と考えた太夫は、着物を整え玄関へと向かう。薄暗い廊下の天井で輝くガラス細工のような電灯もそこから購入したものであり、暖かな光り方をするソレが太夫は好きであった。「一度お礼がしたい」と願った想いが通じたのを嬉しく想い、ゆっくりと階段を下りていく。





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