ディノヒバU
□融解
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園内は予想していたよりも人は少なくて、あまりに群れていないことから、恭弥にとって少しは快適そうにも思える。
黙々と遊園地のマップを見つめている恭弥の姿を見るかぎり、退屈はしてなさそうだ。言い過ぎかもしれないが、何に乗ろうか一生懸命悩んでいる様子は逆に楽しそうにも見えてくる。
カラフルなメリーゴーランドやコーヒーカップなどが彼方此方に並ぶ道をのんびりと歩いていると、急に恭弥が立ち止まり、目の前のアトラクションに指を差した。
「ジェットコースター…」
恭弥の指差す先には、くねくねと曲がりくねった路の上を勢いよく走っているコースターが聳え立っていて。落ちたり一回転したり。
今コースターに乗っている人たちの悲鳴が、乗る前からもう既に其の恐怖を物語っている。
「あ、あれに乗るのか?」
「当たり前でしょ」
「怖いんだぜ?」
「僕に怖いものなんか無いからね、それにそう言われれば言われるほど乗りたくなるよ」
ディーノがなんとか説得しようとしたものの、「やだ乗りたい」と繰り返して駄々を捏ねる恭弥に結局根負けしてしまった。
「はいはい、乗ればいいんだろ乗ればっ」
「早くっ」
「そのかわり、遊園地にいる間ずっと手繋いでもらうからな」
「えっ……」
みるみるうちに頬が赤くなっていく恭弥の手を、貝殻繋ぎの要領でぎゅっとディーノが握る。
その様は、もう誰がどこからどうみてもラブラブな恋人同士にしか見えないだろう。
容姿端麗な美男ふたりの行動に、嫌でも周りの視線は集まる。
その視線を気にしないかのように彼らはジェットコースターへと向かった。