瓜獄

□初めてのちゅー
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「瓜ー…?」



いつもなら俺の横で頬づりしてたり、寝てたり、顔を引っ掻いたりしてくる瓜が……今日はおとなしい。



何してやがんだ?



俺は、瓜の気配がする方へこっそりと近づく。



『以上、恋の質問コーナーでしたー!続いて明日のお天気情報……』



テレビ?



瓜は、目を輝かせながらテレビにくぎ付けになっていた。



あんなに近くで見て…目ー悪くなっても知らねぇーからな…?



まあ、これはこれで静かだし、煩いよりはいいか…と気付かれないように後退りしようとした時
瓜がくるっと振り向いた。



「隼人ーっ!」



「げっ、」



瓜は走って俺の下に駆け寄ってくる。



「なあ、隼人!」



「何だ…?」



瓜の期待に満ちた表情に嫌な予感がする。



「隼人に頼みがあんだっ」



「頼み?」



「おうっ、あのな……」



「何だ?」



「俺にキスしてほしいんだっ」





「…………………」



「はやと…?」



こ、こいつ今なんて…っ



瓜の口にした言葉をよくよく考えてみてもいい方向に持っていくことはできそうにない。



こいつが突拍子も無いことを言い出すのは予想していたが、
こんなこととはさすがに俺も思わなかった。



「だめなのか…?」



俺の沈黙を不安に思ったのか、悲しげに瓜の耳がたれる。



「そうじゃなくてさ…いきなりなんでキスなんだ?」



「だってキスって好きなやつにするんだろ?テレビで言ってたぜっ」



「…テレビ、な」



さっき、瓜が懸命にテレビ見てたのはそういうことか…



俺はこの(一応)小さな可愛い仔猫に余計な知識を与えたテレビを恨んだ。



「でも…」



「どーした?」



「してくれないってことは…隼人、俺のこと嫌いなんだろ…?」



その小さな呟きに俺はため息をついた。



まったく…



「そんなわけないだろ」



「じゃあっ…!」



「キスは簡単にするもんじゃねーんだ」



不思議そうな顔で俺を目を合わしてくる瓜に。



「でも今日は特別だかんな」



ちゅっ、とおでこにキスを落とした。



「………隼人」



目を丸くして動かない瓜は、顔を真っ赤に火照らせる。



「い、今のっ、テレビで見たのと違う!」



「キスする場所はどこでもいいんだよ…っ」



「そ、そーなのか?」



「覚えとけ、ばか猫」



今度はまた余計な知識を瓜に身に付けさせてしまった自分を恨んで後悔するとして。



「で、俺にはねぇーのかよっ」



「俺が隼人に…っ?」



耳まで真っ赤になってる瓜は慌てて手の平で自分の顔を隠した。



「ま、また今度だっ」



実際にされてみて恥ずかしかったのか、瓜はそそくさと逃げ出した。



そんなまだまだ子どもな瓜だけど、こいつの成長を見守るのも悪くねぇーかな。





またいつか
お前からキスしてくれるのをちょっとだけ楽しみにしといてやるよ。










end

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