ディノヒバ
□紫色のアスター
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彼が毎日僕を訪れるようになったのはいつからだろう。
「恭弥っ」
修行する上でお互いに両思いだということが判明して。
自然と、いや彼の強制で付き合ってみることになった僕たち。
「何か用?」
「ただ単に恭弥と話したいなーって」
でも、付き合って何をするのかも分からないし。
頭が勝手に付き合う前より彼のことを余計に意識して、うまく話すこともできない。
こんなことなら前のままでもよかったんじゃないのかな。
それに彼と僕が付き合ってる噂が学校で流れ出してるみたいだって草壁から聞いた。
沢田綱吉や、周りの草食動物たちだって、応援すると言ってくれてる反面どこかで僕たちのことをおかしく思ってるのかもしれない。
「………」
「恭弥…?」
「な、何…?」
俯いていた顔を上げて彼と目を合わせた瞬間、その目に釘付けにされてしまった。
彼の手が頬に触れたかと思うと、そのまま引き寄せられるようにして唇が重なってしまう。
「ん…っ!」
キスした直後だって言うのに、動揺してるのは僕だけみたいで彼は照れる素振りも見せずに僕を見つめてきた。
顔が火照ってきて、頭が彼でいっぱいいっぱいになって、はち切れそうになる。
「恭弥、今さっき誰のこと考えてた?」
「え…っ?」
「俺じゃないだろ?」
どれだけ彼を1番に想っていても、あの草食動物たちにどう想われているのかと心配していたのは事実で。
こんなに彼が好きなのに、彼以外のことを考えていたと思うと自分で自分を後悔する。
でも、今は…
「今は…っ、頭の中あなたでいっぱいだよ」
少しだけ背伸びしながら、彼の唇にさっきのキスのお返しをした。
ほんのちょっと触れるだけのキスだったのに、隠しきれないくらい顔が赤くなっていく。
「俺も頭ん中恭弥でいっぱいっ」
「ふーん…」
付き合ってよかったかな。
って、ちょっとだけ思った気がする。
end