ディノヒバ

□コントラスト
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「ねぇっ!起きてよディーノっ」



「あ、あと5分…」



もう何度このやり取りが繰り返されただろうか。
ベッドで布団に被る俺を先程からずっと必死に揺さぶってくる。



「ねぇ…!」



布団の隙間から俺の顔を涙混じりに除き込む恭弥に、
意地悪してみたい気持ちもあったが、猫みたいに体を擦り付けてくる恭弥に寝てなんかいられなくなった。



「恭弥おはよっ!」



「ふぅ…やっと起きた…今何時だと思ってるの」



「ごめんって!」



「くすっ、疲れてたんでしょ」



目を細め、きゅっと口角を上げて微笑む愛猫を、引き寄せるように抱きしめてやる。
俺が寝てる間にお風呂にでも入ってたのか、恭弥から甘いシャンプーの香りが漂っていて、濡れた漆黒の髪が更に色気を醸し出していた。



「おはようのちゅーは?」



「そんなことより早く!」



目覚めの愛をそんなことで片付けられたことにショックを受けながらも、恭弥に催促され、リビングへと引っ張られた。



「早く、あれ!」



ぴっと恭弥が指差した先の壁に掛けられた紺色の浴衣。
亀と鳥の刺繍ってのがエンツィオとヒバードなんかを思い起こさせて少し嬉しくなる。



それに、きらきらと目を輝かせて浴衣に見入る恭弥に思わず笑みすら溢れた。



「着替えるから向こう向いててね」



「わぁーった」



何でも、今日は並盛で1番大きなお祭りらしい。
恭弥がこの祭りを前々から楽しみにしてるのを知っていて、今日の為にと内緒で浴衣を買っておいたんだ。



「もういいよっ」



「………」



綺麗な日本美人の恭弥には、やっぱり紺が似合う。
このまま祭りに出掛けて他の人たちの目に触れさせるのがもったいないくらいだ。
そんな恭弥を押し倒して浴衣プレイ…といきたいところだが、ここはぐっと抑えて。



「どこか変…?」



「いや、すっげー可愛いっ!」



「………ありがと」



照れくさそうに笑う恭弥を抱きしめて、細い首筋にちゅっと深紅の花びらを散らす。



「み、見えるとこに痕付けないでよっ」



「俺のものって、印」



「ばか…っ」





「よし、行くか」





白い肌に、黒い髪、紺の浴衣を着こなす恭弥に、俺の付けた深紅はよく映えていた。









end

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