ディノヒバU

□木苺のプラリーヌ
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外は冬には珍しい雨。
ぽつりぽつりと地面に落ちるその音を聞いてるだけで、どこか寂しく肌寒く感じる。



でもそれは、俺が今ここにひとりぼっちだったら、の話。



目の前には愛らしい恭弥が、まるで俺の部屋なのに自分の部屋に帰ってきたように慣れた雰囲気でくつろいでいる。
先ほどの突然降りだした雨をしのぐために、急遽ここに連れてきたんだった。



変なもの落ちてたり、どこか汚れてたりしないだろうか…。
恭弥が来るとわかってれば……
昨日の夜は寝ずにでも隅々まで、完璧に掃除してただろう。
部屋の真ん中に置かれた目立つ机の上だって、雑誌とか書類ですごい散らかってるし。
綺麗好きな恭弥のことだ。不快に思われたりしたら……。



「綺麗な部屋だね」



「え、あ…そーかっ?」



よ、よかったーっ!



背を向けて恭弥から見えないよう小さくガッツポーズ。
さっそくベッドに…って……。



「恭弥ぁー…せっかくふたりきりなんだからよぉー」



「僕は今、本が読みたいの」



カーペットへ三角座りを崩したような体制で座り込んだかと思うと、恭弥はどこからともなく本を取り出して読みはじめる。



「バカきょうや……」



ちょっかいでもかけてやろうと近付いた瞬間、不覚にも、恭弥がページをめくるその仕草に見惚れてしまった。
綺麗な指は、ひらりと静かにページをめくり、深い漆黒の瞳の視線は、本の上を上下しながら文字をスラスラとなぞっている。



可愛いっつーか…
綺麗っつーか……。



「恭弥…抱きしめてい?」



「な、に…言って…っ」



「邪魔しないから」と、恭弥の答えも待たずに俺は後ろから恭弥の腰に手を回した。
そうすると、恭弥は黙って俺を椅子がわりに背中をあずけてきて。



俺は目の前の背中に顔を埋めた。
恭弥の大好きな香り。
すげー…ドキドキする。



「心臓…うるさい」



「あ、聞こえてた?」



「……バカ」



恭弥の本を覗きこむと、そこには先ほどから全く進んで無いページがあった。
集中できてないんだろうなー…。
俺がそうさせてるんだと思うと口元が自然と綻んでくる。
やっぱり恭弥も、俺のこと意識してくれてたりするんだろうか。



「恭弥ー可愛いーっ」



「……邪魔」



「んー…」



惚けるように簿かすと、恭弥は呆れたのか飽きたのか、また本に視線を戻してしまった。



けれど、髪の隙間からは真っ赤な耳が覗いている。
恭弥は肌が白いぶん、照れるとすぐにすっげー真っ赤になるから、わかりやすいんだよな。
嫌われたかと思ってひやひやしたときも、この朱色の頬と肌に何度も何度も安心させられたし。



「恭弥、ちゅーしてい?」



「な……っ!」



抱きしめたときと同じように、無理やり俺は唇を押し付けた。
桜色のそれは、いつも変わらず柔らかくて、ふわふわしていて…どうしても離したくなくなる。



唇だけじゃなくて、本音言うと恭弥そのものをずっと離さないで抱きしめていたいんだけど。そんなこと伝えたら…怒っちゃうかな?



リップ音をたてながら、自分の唇をそこから惜しんで離していく。



「…俺、恭弥のことずっと離したくない…ずっと一緒にいたい!」



「……勝手にすれば?」



はぁ…とため息を付いて、冷たく睨み、また本に視線を戻す恭弥。
でも、その顔は真っ赤だった。










end


H22*02/26

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