小さな恋物語

□みっつ
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金髪で、パーマがかった髪に、鷲色の瞳の彼。
中学生くらいで、僕より15pほど背が高い気がする。



外国人なのかハーフなのかよくわかんないけど、日本人離れした綺麗な顔立ちだ。



「ほらっ、タオル2枚あっからお前も濡れてるとこ拭けよ」



「……ありがと」



目の前に出されたそのタオルを素直に受け取り、彼と目を合わせないように俯いて礼を言う。
ありがとうなんて、今まで口にした記憶も無いから…自然と出てきたことに自分でも驚いた。



「それ、お前が捨てたのか?」



「そんなわけないでしょ」



「そっか、そいつ昨日から居んだぜ?
俺…飼ってやりてーんだけどもうちょっとしたら日本離れるし…無理なんだ」



「ふーん」



「それでさ、大雨で猫が心配になって来てみたら
猫と一緒にびしょ濡れになってるお前が居っから…驚いたぜ」



てっきり彼が捨てたんだと思ってたことを、一応心の中で謝っておく。



「だからタオルいっぱい持ってきてるんだね。
タオル持ち歩くのが趣味なんだとでも思ってたよ」



「おっ、おい…!そんな趣味あるかよ…っ」



「くすっ」



「ははっ、ったく可愛くねーやつだぜ」



初対面であまり時間もたってないのにこうやって笑い合えるのは彼の明るい性格のおかげなのかな。



あまり人と親しく話さない僕にとっては、こんなどうってことの無い会話が新鮮であったかい。



「そーだ、猫…」



ランドセルの中に押し込んだままだった猫に気付き、急いでふたを開ける。



「お前んちじゃ飼えないの?」



「飼えてたらとっくに連れて帰ってるよ…飼い主が見つかるまで僕が公園で育てる」



「早く見つかるといーなっ」



「うん」



彼は、僕の小さな微笑みに、比べものにならない大きな笑顔を返してきた。



「みゃーお」



「こら…!引っ掻くなってっ」



猫と戯れている彼の顔を眺めていると、下まつ毛が綺麗で長いことに気付く。
やっぱり外国人だったからか、つい整った容姿に見とれてしまう。



「あっ、雨止んでるぜ?」



空を見上げるといつのまにか雨は止んでいて、流れる雨雲の隙間からは夕日が顔を出していた。



「ほんとだ…」



「って…6時…!?」



公園の時計に目をやり、驚きながら声を上げる彼。
正直僕も驚いた。ここに来てから軽くもう2時間以上経ってる。



楽しい時間はあっと言う間に過ぎるってよく聞くけど、これが楽しいってことなのかな?
ただ話してただけだけど…



「やっべ、俺今日は6時に帰らねーといけねーんだっ」



「ふーん…」



それに心のどこかでもう少しだけ一緒に居たいとか思ってる。
どうしてか、僕にもよくわかんない。



「じゃあな…っ!」



「じゃあね」



僕は、大きく手を振った彼に、気付かれないくらい小さく手を振り返した。



走って公園から抜け出していく彼の姿を見送ってから、乾いてきた段ボール箱に猫を戻す。



「はぁ…」



「にゃん?」



頭がぼーっとして、頭の中が彼でいっぱいになる。



それに、締め付けられるように胸が苦しい。



本当に、わからないことばっかりだ。

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