小さな恋物語

□ふたつ
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──────…



「にゃーん」



こんな可愛い猫を捨てるなんて…
飼い主の気が知れない。



学校の帰り道。
並盛公園の中を通ると近道だ、と最近気付いた僕は、今日も公園の中へと入っていく。
いつもならたくさんの子供が走り回ったり楽しそうに遊具で遊んでるのに、
どしゃ降りの雨だということもあって人影すら見当たらない。



そんな寂しげな公園のすみに、一際目立つ段ボール箱。
ただのごみかと思って通りすぎようとしたとき、中で何か動いているのが見えた。
とがった耳に、まあるい目。
仔猫?



『拾ってください』なんて書いてあっても拾ってもらえなかったら死んでしまうんだし、
たとえ保健所に持っていかれたとしても、よほど運がよく無いかぎり結局殺されるんだから意味が無いと思う。



「寒いの?」



「みゅー」



とりあえず雨をしのぎたいんだけど、今日にかぎって傘を忘れてしまったことを後悔する。



猫が濡れないように、と背おっていたランドセルを下ろし、その中に猫を入れる。
あまり教科書も入ってなくて、ちゃんと猫が入る隙間があるみたいだ。



「よいしょ…」



しゃがみながらランドセルのふたを閉めて立ち上がろうとしたとき、
さっきまでぽつんぽつんと頭に落ちていた鬱陶しい雨が止んだ。



いや、公園を見渡すとまだ雨は止むことなく降り続いてる。
自分の周りだけ…?
そんなことあるのだろうか。



「お前、風邪引くぜ?」



「!」



急に背後から声がして、目を見開きながら勢いよく振り返る。



「ご、ごめん驚かしちまったか?」



にかっと笑顔を見せながら、僕に開いた傘を差し出す男の子。



「……誰……?」

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