コードギアス
□夢、
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優しい風景だった。
一面に広がる草原に、二人の子供。
楽しそうに笑いながら、草原を走っている。
草原を走り回って、おいかけっこをしているようだ。
そのうちにまずゆったりとした長髪の女の子が疲れてしまって走るのをやめる。
それと大差なく、疲れた黒髪の男の子も全力で走っていた足を止め、女の子と共に歩き出した。
二人は、草原に一本だけ生えた木の下に入り、幹にもたれかかった。
その木はある種恐ろしげな音をその葉でたてながら、実のところは二人を守るように枝を広げていた。
二人が入った木陰は、一見暗すぎるかのようで、しかし心地よい明るさがあった。
二人が他愛ないおしゃべりをしていると、どこからか小鳥が飛んできて木の枝にとまり、二人の方を見て一つ鳴いた。
いつしか空は優しい紅に染まっていっていた。
一番星が空に輝く。
黒髪の男の子がすぐにそれを見つけると、星は嬉しそうに瞬いた。
自分はそれをずっと見ているのに、決してそこにはいなかった。
二人の細やかな表情を見ることはできるのに、二人が自分を認識することは決してなかった。
例えどれだけ手を伸ばしても、二人に触れることはおろか、その空気に触れることさえ叶わないだろう。
例えるなら、これは映画なのだ。
自分はその世界を見て、知ることは出来るのに、そのままその世界に入ることは叶わない。
出来るのはただ静かに見守ることのみ。
さらに空は暗くなり、すっかり夜となった。
いつの間にか、二人の子供は眠っていた。
ゆったりした長髪の女の子は、黒髪の男の子に寄り添うようにして眠っていた。
小鳥も共に、黒髪の男の子に寄り添うようにして眠っていた。
みんな安らかな寝息をたてて。
それを見る一番星も、他の星たちも、二人と一羽を守る木も、その安らかさにつられるかのように静かに、眠りに落ちていった。
そこに自分はいない。
自分もそこに入ってしまいたいのに。
本当ならば、その二人の子供よりも早くに、そこに行きたかったのに。
自分はそこに行ってはいけないのだろうか。
きっと、二人の子供は絶対拒否だけはしないだろう。
ただ、今自分がそこに行ったらだめなのだ。
今、自分がそこに行ったら。
長髪の女の子は自分を見て悲しむだろう。
そして自分と会えたことを喜んでくれる傍ら、ずっと悲しみの涙を湛えているのだろう。
黒髪の男の子は自分を軽蔑するのだろう。
そしてその後も、決して本心には触れさせてくれないのだろう。
なぜなら、それは願いだったから。
自分が永くその世界に行かないこと。
それが黒髪の男の子の、同時にゆったりした長髪の女の子の、二人の願いだから。
二人は、優しいから。
優しいから、そんな願いをかけたんだ。
でもせめて今、二人に暖かい毛布をかけてあげることはできないだろうか。
建物から追放され、ここで眠る二人に、暖かい毛布をかけるだけでも、させてくれないだろうか。
あるいは建物に入れてもらえないか、一言訊ねさせてはくれないだろうか。
それすらもやはり、叶わないのだろうか。
カタリ
近くで音がした。
後ろから聞こえた気がして、背後を振り返った。