Get Backers

□lost memory
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「…マリーア、さんきゅ…な」
「蛮…??」

自らマリーアから離れると、蛮は手の甲で涙を拭った。
蛮自身気持ちが整理された訳ではないが、マリーアに心配をかけたくもなかった。

「蔵人、行くぞ」

赤屍の元に近寄るとその腕を掴み、半ば強引に立ち上がらせる。

「蛮…大丈っ…」
「子供じゃねーんだから、いつまでも心配すンな」

口が悪いのは生まれつき。
百も承知だ。
そして、その言葉の奥に優しさがあることもマリーアはしっかり気づいていた。

だから笑って送り出さなければならない。
それが母の役目だから。

子供が傷ついた時は優しく抱きしめ、子供が自分の足で立ち上がる時は優しく背中を押す。



「…分かったわ。気を付けるのよ」

蛮も分かっている筈

「だから、子供扱いすンなっ!!!」

あたたかい母の愛を




扉を閉める大きな音と共に誰もいなくなった部屋の中。
怪しげなものが並ぶ店内に、ウェーブがかった長い髪の美しい魔女が一人残された。

部屋の隅にある机を隠していた布に手をかけ、それを露にする。
姿を見せたのは、机に広げられたカードたち。
このカードが表す未来は、マリーアにしか分からない。

「…信じなさい…蛮…」

今はもういない愛しい子に向けた言葉は、優しさと絶望の色を滲ませていた。







太陽が大分傾き、空は茜色に染まっている。
マリーアの助言を受けてから、蛮は片っ端から今まで二人で訪れた場所へ赤屍を連れ出した。
しかし、一向に赤屍の記憶は戻らなかった。



元気よく走り回っていた子供たちは家路に着き始めて、楽し気な声は消えていく。

最後に蛮と赤屍が到着した場所は、ただの公園。

でも、二人にとっては特別な場所。


人が消えた公園のベンチに赤屍を座らせ、その隣に蛮も腰を降ろした。

「蔵人…ここ、覚えてるだろ…??」

特別な場所。
それは、二人が今の関係になれた場所だ。

「なぁ…忘れたりしない…よな…??」

思い出の場所。



でも
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