Get Backers

□lost memory
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「うーん…。どうやら、相当キツいのにやられてしまったみたいね…」



着いた先は、カード屋『カルタス』。
信頼できる人とは、母親代わりに蛮を育ててくれたマリーアだった。

赤屍の瞳孔の開き具合、顔色など軽く確認して、マリーアは深く溜め息を吐く。

「呪術師どもの仕業だろ…??」
「ええ…そのようね…」



何故呪術師が動いているのかよく分からない上に、赤屍がやられるような相手だとも思えない。
一体どうして赤屍が…??



「アイツらの目的はなんだ??」
「私も考えているんだけど、心当たりがないのよ…。ただ、ジャッカルがかけられた呪術は精巧で、病的な記憶喪失を忠実に再現されているみたい…」
「じゃあ、医者に診てもらえば治るってことか??」
「でも、私が見た限りかなり深い記憶障害だわ。簡単には治せないんじゃないかしら…」

マリーアの言葉に蛮の胸は締め付けられるように痛み出す。
認めたくない現実を目の前に突きつけられた気がした。
逸らせない、逃げられない。



「じゃあ、一生このままなのかっ??!」

感情のコントロールが機能せずに、不安と焦りが溢れ出す。

「このまま…蔵人が…っ…」

普段は意志の強さを滲み出している濃紫色の瞳は、次々と涙が溜まっては流れ落ちる。
その姿を見ていられなくなり、マリーアは蛮を自分の胸に抱き寄せた。

「蛮…大丈夫よ…」

蛮の背中を優しく擦るマリーアは、子供をあやす一人の母親のようだ。
蛮も、それによって安心感を少なからず受け取っていた。
息が詰まったような切迫感は、マリーアのあたたかい手と心で和らいでいく。

「まだジャッカルが元に戻らないと決まった訳ではないわ…。可能性は低くても、記憶を取り戻す方法はあるの」

蛮を抱きしめたまま視線を横にずらし、マリーアは平然と椅子に腰かけている赤屍を見やった。

「どうやって…??」
「思い出の場所に行ってみたり、大切なものを見せたり…。その人の心に強く訴えることをするのよ」
「心に…訴える…」

消えてしまいそうな小さい声は、マリーアに届いても赤屍の心には届かない。
呪術を受けた者特有の虚ろな目は、どこを見ているのだろうか。
その目に映るものは…??
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