Get Backers

□lost memory
2ページ/12ページ

ホンキートンクで依頼待ちをするも奪還屋に連絡はなく、また銀次は、無限城のマクベスやらに呼ばれて行ってしまい、一人残されてしまった蛮。



『早く帰って、赤屍サンに手料理作ってあげたら??たまにはいいんじゃない♪』



出ていく時に銀次が耳元で囁いた言葉が頭の中を完全に支配している。
言われた瞬間は銀次に拳骨を食らわせてやったが、それもいいかと素直に思い始めてきた。

家にいる時はいつも赤屍が料理をしてくれる。
医師らしく、栄養のバランスが計算された上で美味しい料理を作ってくれるのだ。
その感謝の気持ちを口では言えない分、料理で伝えようと考えた。
普段料理しない自分に、赤屍の口に合うようなモノが作れるか自信はなかったが…

「なぁ、波児。ちょっと教えてほしいんだけどよ………」







にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、牛肉、市販のルーと隠し味の赤ワイン。
大きな買い物袋には一体何人前作るのか、凄まじい量の具材が入っている。
本人曰く、失敗してもいいように…ということらしいが。


波児から教わったビーフシチューが、赤屍に振る舞うディナーとなった。

以前、赤屍と二人で小洒落た洋食屋に行った時、滅多に言わない赤屍の口から『美味しい』を引き出した品が、ビーフシチューだった。
舌が肥えている赤屍を満足させたのだから、それなりの料理人が作っていたに違いない。

それと同じようには作れなくても、喜んでもらえるように…

そう考える姿は、大好きな彼氏に初めて手料理を作ろうとしている乙女そのものだった。



「あれ…帰ってる…??」

まだ太陽が頂点から少し西に傾いた頃。
仕事がある赤屍が帰宅しているには早すぎる時間だ。
鍵がかかっていないドアを恐る恐る開く。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ