僕らの交換日記

□knk
1ページ/2ページ



ある日僕の家に1冊のノートが届いた。


表紙には何も掛かれておらず新しいノート―…だと思っていたが、表紙をめくると‘交換ノート’という文字と5人の名前が書かれていた。

-オープニング-


話は1時間前に戻る。


日曜日。昼下がりの休日ということでベッドでごろごろとしていた僕こと浜岡優は宅配便のチャイムで起こされた。


「…はいはい。」

両親は遠い親戚の結婚式で家におらず僕が出るしか無かったので渋々起き上がり玄関に行き荷物を受け取る。

ドアを開け「宅急便で―す」と配達のお兄さんが少し大きめの茶封筒を僕に渡す代わりににサインを求める。


宛名は僕。差出人はKNK事務局と書かれていた。聞いたことが無い名前だ。


荷物を受け取りとりあえず再び鍵を閉め部屋に戻ると先程まで寝転んでいたベッドに座った。

どうも気になり封筒を開けてみる。

「ノート、だよな?」


中にはB5タイプ、つまり学校で普通に使う大きさのノートが1冊入っていた。


手に取り表裏と交互に何度も見る。
表紙にはタイトルも無ければデザインも無く無地の真っ白。

表紙を開けてみる。


「何だこれ?」

1枚目に文字が書かれていた。

「交換ノート。」


小学生の時に女子がよくやって記憶しかない。

下に色々と説明が書かれていたがそれよりも気になるのが左のページ、表紙の裏に書かれていた名前だった。


「浜岡優、堀北紗由、住木夏也、桃井つかさ、喜多雪都。」

―…良く見知っているというわけでは無いが全員知っている。なぜなら5人は現在同じ高校で更に小、中学校が同じだったからだ。


《月曜日:浜岡優》



とりあえず一日が経ち月曜日の放課後。特に部活もしていないので真っ直ぐ家に帰ってきた。
現在僕の手元にノートはある。
ザッと目を通して把握したこと。僕たち5人で行う。ルールと呼ばれるものがある。
『交換ノート。ルール1、止めずに決められた曜日に日記を書くこと。ルール2、週末は金曜日担当の者か、月曜日担当の者が所持すること。ルール3、ルール4』
ルール3、4は空白スペースになっている。
突然机に置いてあった携帯が鳴った。見たことが無い番号、何かノートと関係があるのか?
恐る恐る通話ボタンを押す。
「もしもし…?」
「あっ浜岡く―ん?」
第一声、どこか甘ったるい声が僕の耳に入る。
「紗由なんだけど―?」
紗由…
火曜日は移動教室が無いのですれ違いになるということはなく安心して堀北を待つことが出来る。
と言っても高校生活の中で休み時間とはとても貴重であり待ちぼうけで終わらせるなんてことは有り得ない。
4限目が終ったこの休み時間、俺は昼食後5限の英語Uの予習をやっていた。しかしノートが気になってどうも集中出来ない。
とりあえずノートを学校に持って来たのは良いが、こんなの他のクラスメイトに見られたら怪しまれること間違いない。
肩を叩かれた。振り向くとクラスメイト。何故か口元が緩んで見えるのは気の性か?
「浜岡、違うクラスの女子が来てるぞ」
そのせいか。そんな関係じゃないっての。
渋々立ち上がり鞄からノートを取り出す「それ何?」とクラスメイトは興味を持った様子でつきまっとてくる。
「…新品のノート?」
僕にも良く分からない。
だからこう答えるしか無かった。
《火曜日:堀北紗由》
‘堀北紗由様へ
貴方にはこれから1ヶ月間交換ノートをやってもらいます。君は2-Aの浜岡君からノートを貰って2-C住木夏也に渡して下さい。’
いきなりだから悪戯らだと思った。というよりそうとしか思えなかった。
でもどうしても気になって浜岡君に電話してみた。すると
『ノート?届いたけど…』
ってのが昨日の話。今日はその実物を見せて貰いにA組に向かっている。
「あっ、紗由。おはよ―!」
「おはよ―。」
「今日放課後西高の人と合コンするんだけど来ない?」
西高か、イケメン率は高いけど偏差値は自分の学校より低いし、パッとした部活も無い。暇だったら行くけど…
「今忙しいから、ちょっと考えとくね。」
つまりパス。
「紗由が忙しいなんて珍しいね。」
「えへへ、ちょっとね。」
笑みは絶やさない、愛想よく、愛想よく。それが私のモットー。この様にして作り上げてきた情報網で昨日浜岡君の携帯の番号も知ることが出来たのだ。
目的地A組に着いた。よそのクラスに入るのは何だが気が引けるのでドアの前から教室の中を覗いてみる。
「どうしたの?」
幸いにもドアの近くに居たA組の男子が私に気づいて声を掛けてくれた。
「浜岡君呼んで来て貰っても良いですか?」
「浜岡、浜岡…」
「浜岡優君。」
男子はクラスの中の女子のグループの方へと向かった。
女子のグループの中の一人が窓側の方を指差し男子はそちらへと向かう。
正直どれだけ存在感が無いんだろう、と思ってしまう。
男子に呼ばれた浜岡君は鞄からノートを取り出して私の方へと向かって来る。
「えっとノート。次堀北みたいだから渡しとくな。」
そうやって渡されたノート。無地で何も書かれていないが―…
「嫌よ、こんな物騒な物。」
「中開いて名前見てみろよ。」
恐る恐る開いてみる。
「浜岡優、堀北紗由、住木夏也、桃井つかさ、喜多雪都…?」
何処かで聞いたことある名前ばかりだ。
「あれ、これって同高いや同中ってか小学校も同じだ!」
「そう、物騒って言うより懐かしく無いか?」
「特に関わり無いし懐かしいとは思わないけど……ねぇ、喜多君って特進だよね?」
「ああ。特進でサッカー部キャプテンで生徒会も副会長だったけな?」
「へぇ…」
今日の合コン断って正解だったかもしれない。
「絶対やろうね、交換ノート。」
良い物件は案外こちらに落ちているかもしれない。
《住木夏也》
「夏―!手紙よ―!」
「…手紙?」
住木夏也、現在16歳と11ヶ月の高2生。学校への登校度は…2年になってから減った。
理由は簡単、つまらないから。
学校通って勉強するより家に篭ってギターの練習をしていた方が俺には楽しいし価値が有るように思える。
だからと言って親を説得させて中退する勇気も無く中途半端に休んだり行ったりの日々。
そういう感じで劣等生気味。
「あんた休むのは良いけど留年だけはやめてよね?」
「分かってるよ。」
手紙を受け取り自室のドアを閉める。
「KNK事務局…?」
「住木夏也様へ…これから交換ノートをやって貰います?」
あほらしいと読みかけの手紙をごみ箱に捨てようとした時、俺は見てしまったのだ。
‘貴方は2-B堀北紗由さんからノートを貰い2-F桃井つかささんに渡してください。’
「………桃井つかさ」
桃井つかさ。同じ小学校、中学校、高校と通ってきた、俺の初恋の相手。
とてもとても変わってしまったが俺が今も想い続けてる相手。
《桃井つかさ》
桃井つかさ17歳と1ヶ月。
職業、学生兼モデル。
学校では2-F、特進クラスに通っている。
桃井つかさ様へ
貴方にはこれから1ヶ月間交換ノートをやってもらいます。君は2-C住木夏也からノートを貰って2-F喜多雪都に渡して下さい。
「…住木君に喜多君か。」
ポストを覗けば自分宛ての怪しい手紙。嫌がらせかと思ったが中身に書いてある2人の名前は小、中、高と同じ学校の人。
親に薦められて受けてみたモデルのオーディションに奇跡的に受かり、高校進学と共に始めたモデル活動。
しかし私は穏やかな学生生活を送りたいため学校ではモデルをやっていることを隠している、
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ