【 Story2 】

□SCENE4
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プレゼクト傭兵団には、都市機能のほとんどを兼ね備えており、外部と同じ生活が出来るようになっていた。
要塞都市と言っても過言ではない。

「ショーウィンドーに並んでるケーキ全種類一つずつ頂戴。」
カーレスはショッピングモールのケーキショップでそんな注文をしていた。
しかし、手には別な店の袋を抱えている。

「あんた、パーティーでも開くのかい?」
対応する若い女性店員は呆れながらもそう尋ねる。

「そう。」
女性店員が手早く箱にケーキを詰める作業を見ながら、満面の笑みで答える。

「お待たせ。」
商品を受け取ると端末機にIDカードを翳す。
これで支払いは完了。現金決済は行わない。全て電子決済。


お目当てのケーキを全て買ったカーレスは、喫茶店のカフェテラスでパフェを食べる。
そのテーブルには空いたパフェグラスが2つとケーキの皿が3枚並んでいた。
異常な光景に周囲の者の視線は、一斉に彼に注がれていた。

「ねぇ、彼女ぉ〜。やけ食いなんかして失恋でもした?」

見知らぬ男が3人、声をかけて来るがカーレスは無視して食べ続けた。

「機嫌悪いねぇ。やっぱ失恋でしょ?」

「失せろ。」
顔を見ることも無くそう告げる。

「んだと?」
その態度と口調に男達の一人が声を荒げたが、別の一人がそれを制する。
この場で騒ぎを起こすのは人目も多く、部が悪過ぎる。
周囲を一回り見回した後、男達はどこかへと去って行った。


それからさらに注文を重ねたカーレスは、満足した表情で店を立ち去った。



緋珠は、足りない物を買出しに出ていたが、気が付けば夕方になっており、夕食に間に合うよう、急ぎ足でショッピングモールを歩いていた。

その行く先を人だかりの山が塞いだ。
見物人の騒ぎ方から喧嘩らしい。
諦めて回り道をしようとした時、人だかりが一斉に開き、一人の男が投げ飛ばされる。
二人、三人と立て続けに男達が投げ飛ばされた。

ほうほうのていで許しを請いながら逃げようとする男達を、それでも蹴り続けるのはカーレスだった。

「てめぇ、しつこかったよな。俺もしつこいんだ。」
一人の男の胸倉を掴みながらそう言うと、怪我している右手で男を殴り飛ばす。
既に男達の意識は薄れている。
カーレスの右手も傷口が開いたのか、僅かだが包帯に血が滲んでいる。

それでも気の済まないのかカーレスは男を殴り続ける。

「もういいでしょう!」

緋珠はカーレスの右手首を掴み止めようとするが、

「邪魔するな!」

と逆の手で投げ飛ばされる。
咄嗟に受身を取り体勢を整えるとカーレスと目が合った。

「お前、何やってんだ?」

「見て判りませんか?貴方を止めようとして逆に投げ飛ばされたんですよ。」

「咄嗟に体勢を立て直せるなんて、なかなかだな。」

そう言ってカーレスは左手を緋珠に差し出す。

「悪かった。」

「いいですよ。」

緋珠は差し出された手を素直に取った。

「医務室に行きましょう。傷口開いてるじゃないですか。また説教されますね。」
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