【 Story2 】

□SCENE2
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それから数日が経ったが、また後で。と言い残したカーレスと会うことはなかった。

数日前、記憶が無いとは言え、口説いた自分に対し返事をする。と言ってキスをし、その直後に「お相子」だ。と言った。
「お相子」とは「仕返し」だと言う事だったのだろう。

それならば、仕返しが済んだ時点で自分には用が無くなった。と言う事だ。
最もあんな事をされた以上、出来れば二度と会いたくないのが本音だ。

そんな風に考えていると、同部屋の同僚から「こんな所にいたのか。」と声を掛けられた。
彼はワインの注がれたワイングラスを二人分、手にしていて、その一つを緋珠に手渡す。

「今年の総合テストNo,1おめでとう。」
緋珠がワイングラスを受け取ると同時に同僚からは祝福の言葉がかけられ、乾杯を交す。

今は成績優秀者を讃えるパーティーの真っ最中。

「これでAランクへの昇級だ。ここに来て半年でAランクだなんて、お前優秀だな。けど、これでまたお前とは同僚だ。これからもよろしくな。」

「そっちこそ昇級おめでとう。お互い頑張ろうぜ。」


プレゼクト傭兵団には、個人の実力に応じて登録ランクがつけられるシステムになっている。
多岐に渡る試験の点数によって、AランクからDランクまでが決まる。
Aランクが一番高く、後は順に下がり、ランクごとに任務内容も変わる。
それは当然、成功報酬にも比例しており、ランクが上がる程得られる報酬も高額だ。

緋珠は入団テストでBランクだったが、今回の総合テストの結果によりAランクへのランクアップとなった。
入団後も年1回は必ず総合テストを受けなければランクダウンとなる。
総合テストは年二回行われるので、そのどちらかを受ければいい事になる。


「それと聞いたか?今、リディアス総帥が来てるらしいぜ。」

「リディアス総帥って、お前が前に教えてくれた、ほとんど姿を見せないと言うあの謎のお方の事か?」

「そうそう。」

「見たことあるのか?」

「ない。」

「それじゃ、誰がリディアス総帥か判らないだろう。」
そう答えて緋珠は苦笑いした。

「そうだな。でも、誰だろうって予想するのも悪くないと思わねーか?」

  リディアス総帥。本名、ミラルド=リディアス。年齢28。
  若くしてプレゼクト傭兵団の最高責任者まで登り詰めた実力者。
  だが、ほとんど人前に姿を見せたことは無く、それが一層カリスマ的な支持を得ていた。


緋珠よりも二年先にプレゼクト傭兵団に身をおいていた、同部屋の同僚は、それだけに知り合いも多いらしく、緋珠に「あの人が総帥じゃないか?」と言っているうちに、別のところへ行ってしまっていた。

緋珠の方も、何人かの知り合いと若干の会話を交していると、通信機からメール受信を知らせるアラームが発せられた。
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