Novel

□初めての
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「初めての」


ここは部室。

龍は伶護に連れられて、おそらく遊びに何処かへ行った。

まったく…元気だな。

俺は別に行きたくないから、適当な理由をこぎつけて残る事にした…ら、雪まで…。

やってしまったよ。


じり…
じり…と

近づいてくる。
逆光で雪の顔がよく見えない。
怖いなこれ。

てか近い!近い!!
恥ずかしい、息をかけるな。

「ゆ、雪、オセロでもししししよう…な?;」

声が裏返ったし。

カッコ悪いな俺。



「…いいよ?」

お。
あっさりと
諦めた……か…?




「……;!聞いてるのか人の話を……!!///;」

「え?オセロでしょ?」

オセロは人を押さえつける遊びでしたっけ!?;
いや ましてや、人を縛りあげる遊びでも…ってちょ…!!;


嫌な予感がする。


「何考えてる…?;」

「じゃあ始めよっか。オセロ。」

ニコヤかにお前は何をしようとしてるんだ。

腕を後ろで縛られ、椅子に固定され、どうやってオセロしろと?
ぶっちゃけ…てかかなり恥ずかしいんですけど。


「早く始めてよ、伶次」

「コマ持てないだろ!!//;…外せ!!//;」

「口でやって?」

「……は?」


今こいつ何て言った…?

俺の耳が節穴になってない限りこう聞こえたはずだ。

口でやれって。



ふ、ふざけるのも…

「いい加減にしろよ!;」

「伶次がオセロやりたいって言ったんじゃん♪」



…くそ、解放してくれる気はゼロか。

「…はぁ」

「じゃぁ、伶次は白。俺は黒。」


何気俺不利じゃん。

目の前にオセロのボード版、右にコマがいくつか並んでいる。


本当にやらなきゃいけないのか…その、えー…っと……口で…。


「伶次が負けたら俺の言うこと聞いてね〜」

「な、何で俺だけ;!!」

「逆パターンももちろんあるよ?♪」


雪が俺の言うことを…それはちょっと良いかもしれ…ってコイツどうせ俺の言うこと聞かないのわかってんだらな!!


「………理不尽だ。」

「なお、離脱しても同じですからねぃ」



はぁ…

と俺は大きくため息をついた。

オセロは俺の方が強い。(多分)

勝てばいいんだ。
早く解放されたい、こんな恥ずかしい状況。


俺は1つのコマを唇に挟む。

「…っ……//;」


そこの黒の横に置けば、、、


ポテッ


「ぁ…」

置きにくい、これ


俺の口から落ちたコマはボード版の右端に転がった。


「ちゃんと置いてよ」


「……わかってる」

……むかつく。


一度ボードに落ちた水平なコマを再度口に挟むのは至難の技だ。


「んん…む、んー…//;」


なかなかくわえられない。

イライラしてきた。

「舌、使ってよ〜」


「っ///!?お前は黙ってろ!;」


何てこと言うんだ。
頭の中何でできてるんだ。
エロス?
まったく。



「いいよ…伶次、すごくエロい♪」

「っ!///…黙れっ!一回死ね//;!」

「いやー、いい眺め」

「……;」


終わったら殴ろうと心に誓いをたて
なんとか俺はコマを運ぶ事に成功した。


まったく、オセロでこんなに面白く無いのは初めてだ。






「ふふ…」


しばらく対戦して、俺も口で運ぶのに慣れてきたのはいいけど…


ま、負けてる!?

俺が!?




悪夢だ…悪夢であってほしい。

そして全力で目覚めたい。


「伶次…伶次の敗けだね。」

「…嘘だ。」


「認めないの?強情だなぁ。」

「違っ!;…な…」
「現実逃避。」



くそ…。



「さぁて、言うこと聞いてもらいましょうか♪」


背筋が凍るのがわかる。
冷や汗が後ろで手ににじんで…って俺、拘束されたまんまだし。

これは危険すぎる。


「……寄るなっ!;」


ずっと押さえていた恐怖感が全身に伝わる。

なんでお前笑顔なんだよ!
怖すぎる!



俺はただ、襲われると思っていた。

「伶次からの初めてのキスが欲しい」


気が一気に抜ける感じの脱力感

っていうかそんだけでいいの?


「なんだよー、その拍子抜けの顔。まさか襲われたかったとか?」

「ち、違う!;///」

「じゃぁ…お願い致しま〜す。」


ズイッと雪の顔が近づく。
目はちゃんと閉じてる…な。
ゴクリ…

では。




……


って待て待て待て待て待て待て待て。

無理無理!絶対無理!


俺からなんて、俺のプライドが許さない。

俺からの初めてをこいつに!?

あぁでも初めてとか気にする時点で乙女で気持ち悪いな、俺。
だけど、
断じて拒否する。



「ッ……//;」

顔を精一杯横に反らす。

固めでチラッと雪を見たら、そのままで固まって待っている。




………………。




色々な思考が俺の頭に回り、頭ん中が真っ白になった。



今回だけなら…いっか。

そう気が揺らいだ







「ありがとね、伶次♪」

「うっさい!!;//」




拘束がとれた瞬間、俺は雪をドツき、そのまま口に手の甲をあてながら部室から走った。




はぁ…まったく



廊下の窓に映る自分の姿が目に入る


赤っ!!


俺…カッコ悪。


肩を落として、俺はまた走り出した。

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