べとべとさんさきへおこし
□勇太くんの中学生日記セカンドシーズン
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その日の夜。
「花火大会?」
「うん。真由美や他の友達と一緒に行こうかなって思うんだけど……その……良かったら、灯子も一緒に行かない?」
一か八か、当たって砕けろとか思って、灯子を誘ってみた。
「………………」
灯子はきょとんとしたまま、何も言わない。
「……灯子?」
そんなに嫌なのかな?と思っていると、灯子が口を開いた。
「花火大会とは……何の事じゃ?」
「え……そこから?」
とは言ったものの、灯子に花火の知識がないのは仕方のない事だ。
「うーんと……まぁ、見れば分かる、かな?」
上手く説明出来る自信がない。
灯子は、にこっと笑って
「じゃあ、行く」
と言った。
「え……行くの?」
多分断られるだろうと思っていたので、聞き返してしまった。
「勇太が一緒に行こうと言ったのではないか」
「そうだけど、でも、他の友達も一緒に行くんだよ?」
勇太は念を押して訊いた。
「うん、わかっておる」
平然と灯子は頷いた。
「妖怪だとバレなければ良いのじゃろう?ちょろいものじゃ」
やけに楽しそうだ。
「……そうなんだけどね。じゃあ、決まりでいい?」
「うん、おっけーなのじゃ」
……という訳で、灯子と一緒に花火を見たいという勇太のささやかな願いは叶えられる運びとなった。