べとべとさんさきへおこし
□勇太くんの中学生日記
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いつも灯子と会うのは、近所の公園だ。
公園に着くと、白い着物を着た女の子がベンチに座って待っていた。
「灯子」
勇太が呼ぶと、灯子は顔を上げて微笑んだ。
「勇太。ガッコウは終わったのか?」
「うん。卒業式で紅白まんじゅう貰ってきた。一緒に食べよう」
まんじゅうの箱を開けて見せると灯子が嬉しそうに笑った。
灯子は甘いものが好きなのだ。
「…ぷりんも美味だが、このまんじゅうというのも美味だのう。ほっぺたが落ちてしまいそうじゃ」
灯子が甘いものを食べて幸せそうな顔をするたびに、その顔を見て勇太も幸せな気持ちになる。
「…そういえば」
ふと、灯子は隣に座る勇太をじっと見た。
「ん?何?」
「今日の勇太はなんだか…いつもと違う感じがする」
んん?と首をかしげる灯子がすごく可愛く見えて、勇太は急にドキドキしだした。
「ど、どこが?」
「ん〜…どこじゃろ…………………あ」
わかった!と、灯子は身を乗り出した。
「いつもと着ているものの感じがちがうのじゃ」
「ああ…これ、中学の制服だよ。来月から毎日これ着て学校行くんだ」
「ちうがく?」
灯子がまた首を傾げた。
「ちうがっこうはその服じゃなきゃ駄目なのか?」
「うん。…変かな?似合わない?」
勇太が聞くと灯子はふるる、と首を振った。
「ううん。なんだかいつもより大人っぽく見えてかっこいいのじゃ。…大きさが合ってないような気はするが」
…服のサイズをつっこまれて、勇太は苦笑を浮かべた。
「…これから大きくなるから、いいんだよ。多分」