短編
□河童のガータロ
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ある日、おらは一人で川で泳いどった。
すると、村の子どもが一人、川の水を汲みに来た。おらは慌てて、川の中に潜って身を隠した。
子どもは桶に水を汲んで、それを持ち上げ歩き出した。
そしたら、桶が重かったのか、子どもはすてんとひっくり返った。
おらは、子どもに見つからないようにそーっと身をのり出してみた。
子どもはしくしくと泣いている。見ると、足のひざこぞうが擦りむけて、血が出ていた。
かわいそうに……痛かろうなぁ……。
あんな傷、おらの持ってる「河童の軟膏」を使えば、すぐ治るんだけどなぁ……。
んだどもなぁ、ノコノコ出ていくわけにもいかんしなぁ……。
子どもは、泣きながら立ち上がってまた川の方へやってきた。
川の水で、怪我した所をあらっている。
涙がぽろぽろ流れるのが、かわいそうで、かわいそうで……。
おらは、ついに我慢できなくなって、子どもの前に出ていってしまった。