べとべとさんさきへおこし
□勇太くんの中学生日記
1ページ/3ページ
今日は小学校の卒業式。
勇太は真新しい、中学校の制服に身を包み、鏡の前に立っていた。
「…デカい」
勇太がつぶやいた通りに、制服は大きかった。
肩幅も袖丈も、不恰好と言えるほどに大きい。
だけど、これからどんどん背が伸びていくんだから大きめの物を買わなくちゃ、と、お店の人にも親にも言われて、敢えてブカブカな制服を着ている。
「…ほんとに、丁度良くなるのかな」
うーんと唸って、鏡に映る自分を凝視した。
(まあでも、でっかくならなきゃ困るよなあ…せめて灯子よりは)
灯子は、勇太の少し変わった友達だ。
変わった…と言っても、見た目が変という訳ではなく(むしろ美少女)、性格が変という訳でもなく(むしろ天然で可愛い)、…人間ではなく、妖怪なのだ。
その、少し変わった友達の灯子に、勇太は友達以上の感情を抱いていた。
今日の卒業式が終わったら、新しい制服を見せに行こうと思っていたのだが…。
思った以上に、制服が大きかった。
「…ま、しゃあないか」
どうにもならないことを悩んでも仕方ない。
勇太は諦めて学校へ行った。
クラス全員が同じ中学校に進むため大して感慨深くない卒業式が終わり、勇太はさっさと帰ろうとした。
…が、その前にクラスメートの北川真由美に呼び止められた。
何を思ったか、制服の第二ボタンが欲しいなどと言い出したが、勿論断った。
これから毎日着るものなのに何をいうのだろう。
勇太は真由美と別れて、今度こそ灯子に会いに行った。