べとべとさんさきへおこし
□べとべとさんさきへおこし
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…やっぱりやめておけばよかった…
暗い夜道を歩きながら、勇太は後悔していた。
事の起こりは今日、学校で。
同じクラスの真由美の話から始まった。
「昨日、塾の帰りにべとべとさんに追いかけられたのよ!」
真由美は興奮しながら、クラスメイト達に話した。
だけど、その話を聞いたほとんどみんなが、信じなかった。もちろん、勇太もその一人だった。
「そもそも、べとべとさんって何?」
誰かがそう言った。
一人で夜道を歩いていると、後ろから何故か足音が聞こえてくる事がある。これはべとべとさんという妖怪だといわれている。
…とかなんとか、小さい頃にじいちゃんに聞いたことがあったような気がする。
その妖怪に真由美は追いかけられたと言うのだ。
「ほんとだもん!ほんとにべとべとさんだったよ!」
真由美があまりにも言い張るので、勇太は言った。
「じゃあ、今日の夜、おれが確かめてやるよ」
この時の勇太は、そんなもんいるわけないだろ、とタカをくくっていた。
今時、小さい子供じゃあるまいし(勇太は小学6年生だ)、そんなの信じるワケあるか、と。
……だけど。
真由美がべとべとさんに追いかけられたのは、学校の近くにある公園のそばだったという。
勇太は塾の帰り道、少し遠回りして帰ることにした。
最初はまったくもって真由美の言い分を信じてなかった勇太だったが、公園の近くまで来た時、おかしい、と思い始めた。
…こつ、こつ、こつ
…こつ、こつ、こつ
後ろから勇太のではない足音が聞こえる。
「…………」
勇太が止まると、もうひとつの足音も止まる。
…こつ、こつ、こつ
…こつ、こつ、こつ
勇太が歩き出すともうひとつの足音も歩き出す。
勇太は振り返って後ろを見た。
しかし、誰もいない。
勇太は怖くなって早足で歩き始めた。
だけど、後ろから聞こえる足音はなくならず、相変わらず勇太と同じ歩調でついてくる。
そういえば、真由美がべとべとさんに追いかけられた時に唱える言葉がある、と言っていた。
…が、勇太はべとべとさんの話自体を頭から信じていなかったので、その言葉もまったく聞いていなかった。
…しばらく歩いて、覚悟を決めた。
勇太はいきなり立ち止まり、叫んだ。
「誰だよ!いるなら出てこい!」