第二章
□鬼、序
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自分が何者かなど
考えたこともなかった
陽の光が日に日に強まっていくようになり。
京の街は変わらず賑わっている。
そんな中、私と永倉さんは人があふれる街に出てきていた。
今日は非番だから巡察ではなく。
屯所で使う日用品と食料の類を買いにだ。
「うーん…」
「おい昴、まだ決まんねぇのか?」
「待ってください。今吟味中なんですから」
「んなもんどっちでも一緒だっての」
「一緒じゃないから悩んでるんじゃないですか。…うん、じゃあこちらを。以上でお願いします」
私は吟味済の野菜たちをごそっと店主に差し出す。
「へえ毎度。いやぁ、いつもながら見事な品定めですわ坊さん。これもオマケしとくんで、よかったら食べてください」
「いいのですか?助かります」
「いいえ。今後ともご贔屓に」
代金を払い、次の店に向かうべく通りへ出た。
「さてと、次は」
「……」
「どうしました?永倉さん」
「…分からん。俺には全部同じに見えるっつーのに」
「そうですか?結構違いますよ」
両手に抱えた袋の中の野菜たちを凝視する永倉さん。
「ある種特技だな、その眼力」
「眼力って大げさな…」
「いやいや。大したもんだって、さっき店の親父さんも言ってたしな!」
永倉さんはわしゃわしゃと私の頭を撫でまわすと、私が抱えていた袋をひょいと持ち上げた。
「永倉さん?大丈夫ですよ、自分で持てますから」
「今日は天気も良くて人が多いからな。危なっかしいんだよ」
「…す、すみませんね。相変わらず人混み歩くのが苦手で」
「別に悪くないさ。ただもう少し得意になってくれたらと思うだけで」
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