第二章

□陽のあたる場所、一
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「はっはっはっはっ!」
 

昼日中の大通りに、豪快な笑い声が響いた。


「……笑い過ぎですよ、永倉さん」
 

一応今は巡察中なのだから、笑うにしてももう少し控えめに…。


「悪い悪い。いやしかし、いつも冷静なお前がそんなに動揺するたぁな」
 

喋りながらも笑うことをやめない永倉さん。
 
……前言撤回だ。
 
いい加減笑うこともやめて欲しい。


「すみません東雲君。うっかり稽古の時のことを喋ってしまったばっかりに…」
 

と、大きな体で申し訳なさそうにしているのは島田さん。


「いえ、島田さんのせいじゃないですよ…」
 

むしろ島田さんは助け船を出してくれたようなものだ。
 


巡察に出かけてすぐのこと。
 
山南さんの言葉がどうにも気になっていた私は、ぼんやりとしていた。
 
その様子のおかしさを気にかけた永倉さんに、どうかしたのかと問われて。
 
でも、山南さんのことが気になりますとは正直に言えず。
 
答えに困っていると、島田さんが。


『朝稽古の時のことですか?』
 

と、切り出したものだからさぁ大変。
 
本人抜きに朝稽古の時のことを詳細に聞き出され、揚句。
 
冒頭に戻る…。



「いや、悪かったって。珍しくってついな」


「…珍しいって、何が」


「島田さん!ちょっとよろしいですか?」
 

私たちとは離れて市中を回っていた数人が島田さんの所に駆け寄ってきた。
 
何やら確認してほしいことがあるからということで、島田さんはその隊士たちに連れられて行ってしまう。


「誰かのことをそうやって嫌だとか言ったりすることがな」


「え?」


「さっき聞いてたろ?何が珍しいのかって」


「…あ」


「どんな奴にだって好きな奴と嫌いな奴がいて当然なのに、お前ってそういうの全然言わねぇからさ」


「それは…、言いようがないからですよ」
 

この場所に、新選組に。
 
そんな人など居ないから。


「嫌いな人など、この場所に居ませんから」
 

そりゃ多少苦手に感じる人は居るけれど。
 
でもそういうのも含めて、この場所にいる人皆が好きだ。
 
この場所が、好きなのだ。




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