ku-a、旋律編。
□空に溶ける想い
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小さく、息を吐く。
その吐いた息は白く、空気に触れ溶けていく。
空を、仰ぐ。
その空は青く、吐いた白い息が溶けてなくなったように、白い雲に覆われている。
寒さも、温かさもなく。
また、その存在ですらそこにはない。
空想の、そのまた空想の中に広がる、
小さな、旋律。
「―――僕らは、あの空の向こうへ旅立つんだよね…」
繋いだ手に、力を込め紡ぐ。
その手から伝わる振動に、傍らにいる片割れへと視線を向けた。
表情が、強張っている。
緊張しているのか、旅立つことを恐れているのか。
恐らくはその両方だろう。
「世界中に散らばった旋律の欠片を集めるために、俺たちは向こうへと旅立つ」
「…うん。旋律は、とても小さくて見つけにくいもの。そのほとんどが、どこにあるのかわからない」
「目を凝らしても、耳を澄ましても、すぐには見つからない貴重なもの」
「だから、その両方を併せ持つ僕らが抜擢された」
「…ほとんど、厄介払いみたいな状況だったけどな」
真剣な表情で告げられたことを声に出し復習していれば、急に破顔し笑ってそう告げる片割れ。
それに眉を寄せ、呆れた表情を浮かべれば今度は笑みを浮かべ始める始末。
「もう…それはルナが悪いんだろう…?僕は何度もとめたよ?」
「わかってるよ。でも、それが俺のやり方でもあるし、生き方でもあるんだから仕方ないだろ」
「勝手なんだから…別にいいけど」
ため息をつきながらそう告げれば、開き直った様子でそう返される。
血を分けた片割れとはいえ、自分とは大違いの性格である彼に、苦笑を浮かべるしかない。
恐らくは、そうやって自分の緊張やらをほぐしてくれているのだろうから、本当は感謝したいところ。
「…スピカ。この空の向こうへ行っても、俺たちはずっと一緒だからな。たとえ離れ離れになっても、お前の隣には俺がいるから」
16年間、ずっと二人一緒に過ごしてきた分、離れ離れになるのは正直嫌だ。
常にその傍らにいたはずの人が、そこにいないのだと認識したときの寂しさというものは、計り知れないほどに絶望感と喪失感だけが残る。
けれど、いつかはこんな日が来ることも想像していた。
だからなのか、今になっても実感は湧かない。
「……僕なら大丈夫だよ、ココにずっとルナが、兄さんがいるから」
存在が、そこになくとも。
この心の中には、常に存在しているから。
兄弟とは、――双子とは、そうしたような引き合う力を以て生まれてくる。
だから、常に一人ではないのだと、感じるのだろう。
特に、彼ら二人はその中でも特別な双子だから。