小説版『刹那に見る夢』
□番外編 1
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「ナナ様…七様ッ」
「…紫音、そんなに大きな声では…」
必死に呼ぶ声。
この声の持ち主は、紫音(シオン)。
隣で嗜めるのは、茜音(アカネ)。
この二人、大きなベッドの縁に立ち、横たわる青年の顔を覗き込む。
「……っ」
「七様ッ」
「……あぁ…お前達か…」
青年が目を覚ます。汗の滲む身体を起こし、乱れていた息を整えようとする。
彼は、七日(ナナカ)。
茜音と紫音の主人である。
「七様。良かった…」
「七日様。紫音が随分と心配しておりました。
…また、あの夢ですか?」
「あぁ…」
七日は夢を見る。耐え難い悪夢を…暗闇の記憶を。
しかし、今日は一瞬にして悪夢を拭われる。
扉の向こうが、騒がしいのだ。
誰かが言い争っている。
ま、その《誰か》は見当が付くが…
「俺はもういい…
お前達は、仕事に戻れ…」
そう言って、ベッドから出る。
少しふらついた足で、扉まで向かう。
全長3メートルは有るだろう、木製の扉。
扉全体にわたり、龍の装飾が施してある。
ゆっくりと扉を開ける…
そこに見えたのは…