short novel
□満たされて
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Violet☆Saver
番外編
満たされて
〜背中越しの愛〜
***
初夏の風がもう吹き初めている今日この頃ーー…。
「…ふぅ〜」
中庭にある大きな木の木陰で、昼飯を食った俺は、一息ついていた…。
この時期の…
ここでのこんな一時は、また気持ち良くて最高で…。
俺はゴロンと横になりながら空を眺めていた…。
「あ〜♪やっぱりここにいた〜!」
「…?」
明るい笑い声と共にやってきた少女に、俺はふと目をやる。
「…瑠花…。」
「こちらの反対側…いいですか?」
瑠花は、そう言いながら、俺が居る反対側の木陰に、そっと腰を下ろした。
「ここ…ホント気持ちいいよね〜♪」
瑠花は、ウーンと背伸びをした。
「…俺が最初に見つけたんだからな〜横取りすんなよぉ〜?」
「えー!何言ってんのよ〜!この場所は、アタシも前からお気に入りだったんだから〜。アタシの方が先よ〜。」
そう言うと瑠花は、プッと頬を膨らませる。
……あ…。
そっか…。
俺の脳裏に、ふとある光景が浮かび上がった…。
そうだった…。
きっと…
瑠花の方が最初にこの場所を知ってた…。
ーー…それは…
もう、忘れ掛けていたけど…。
何もなく…
通り過ぎていってた…ある一面だったけどーー…。
…その日も俺は…
こうやって、ここで昼寝をしてた…。
あの頃の俺は、何もかもがどうでも良くて…授業も平気でサボってて…。
やりたい事も見つからず…
苦労も知らず…
ただ…
つまんねぇ毎日だとそう思ってたーー…。
けれどーー…。
ーーー…
「…うっ…ひっく…」
(…え?)
突然聞こえてきた泣き声に、ふと目が覚める…。
(…な…何だぁ?)
「ううっ…ひっく…」
俺がここに居るのを知ってか知らずか…
その少女はただひたすら泣き続けていた。
「…?」
ふと…
泣いてる少女を垣間見る…。
伏せて泣いてっから顔は見えなかったけど…セミロングの髪が…風にそっと揺られていた…。
傍らには、無惨にも落書きされた国語の教科書…。
(…ああ…。イジメ…かよ…)
だから授業にも出れずに…ここで泣いてるってワケかーー…。
俺はその教科書を見つめながら、小さく溜め息をついた…。
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