ラビアレ

□Trick or treat! -お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ-
1ページ/5ページ



ーー10月31日。


この日僕は任務に出ていて、教団に帰って来たのは午後18時を過ぎた頃だった。
いつものように地下水路を船を使って渡り、エレベーターに乗って廊下に出た…まではよかったんだけど……。


僕の視界に入ったのは、床の両側に適度な距離で置かれた、奇妙な形のカボチャ(例えば人の顔みたいなのとか)が照らしている、ほぼ真っ暗な廊下でした。


「い、一体、どうなって…?」


今まで教団にいて、色んな事件(ほぼコムイさん絡み)を見てきたけど…。
流石にここまで変わってはいなかった。
…まさか…何か新しい事件でも起こって…?!
そう思うと、居てもたってもいられず、ほぼ真っ暗な廊下を僕は走り始めた。


ゴツッ


「あだっ」


……直ぐに壁に頭をぶつけちゃったけど。
あー、ぶつけた箇所が地味に痛い…。
自然と溢れてきた涙で、視界が滲んできた。


「大丈夫?!アレン君!」


…この声は…リナリー?!
僕の名前を呼ぶ声が聞こえた後、走って駆け寄って来る足音が聞こえる。
涙目は見られたくない…!と、慌てて服の袖で涙を拭い去った。


「だ、大丈夫です…心配してくれて、ありがとうございま……」


顔を上げ、笑顔でお礼を言おうとしたけれど…
僕の言葉は、リナリーの姿(頭上か)を見た途端、止まってしまった。


「どしたの?アレン君。」


不思議そうに、軽く首を傾げてみせたリナリー。
呆気に取られていた僕は、とりあえず気になったことを質問してみた。


「あ、あの…その帽子は…?」


リナリーは今頭の上に(千年伯爵並に)個性的な帽子を被っていたんです。
僕が質問した後リナリーは、「あぁ…」と軽く頷き、にこっと笑顔を見せた。


「今日だけでいいから、どうしても被ってほしいって、兄さんが…。」


笑顔を苦笑いに変えて、リナリーは軽く「ふふ」っと笑った。
…コムイさんのデザインか…。


「コムイさんらしい、個性的なデザインですね。」


それだけ言って、同じく苦笑いを浮かべてしまった。
…本当に、コムイさんらしいですよ……。


「それじゃあ、報告書を書かないといけないので。」


もう必要ないとは思ってはいるけど(どうしても癖で)営業スマイルを浮かべ、リナリーの横を通り過ぎる。


「アレン君……この暗闇の中、兄さんのところまで行けるの?」


…あ。そういえば忘れてた。
ゆっくりと振り返り、笑顔を向ける。


「大丈夫ですよ?修業時代の節約生活で、夜目が効くようになりましたから。」


あはは〜と笑いつつ、目は笑ってないだろうなと直ぐに検討がついた。
僕はいつも、師匠絡みの話しをする時は(嫌な思い出がほとんど…っていうか大半だし)声とか口は笑ってても、目までは笑えないから。
それもこれも、師匠のせいなんですよ…。


「そ、そう……とにかく、また後で会いましょう」


にこっと笑ったリナリーの笑顔に、何か含みがあったような気がするけど…
気のせいだ、と信じたい。


「はい、また後で。」


今度は普段の笑顔を浮かべ、踵を返しコムイさんの所に向かう。
…この後、何が起こるか知らずに…。




.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ