novel

□汚声
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オレの母親は小学校の入学式なんかこなかった
もっと言えば、オレに何もかも関わろうとさえしなかった

小さい頃は家に帰ると
テーブルの上に五つ星だか何星だかの料理が置いてあって、それを1人で食べた
温かいのになぜか冷たかった

そして最近になると、一ヶ月に一回
金という金が大量に送られてくる
それでオレはメシを食う

こんなんだから、1人以上の大人数で食べるのは学校でなきゃ機会がなかった
だって、父親も母親もオレが帰ってくればすぐにどこかへ出かけていく
すがり、引き止めるといつも無言で金を渡された
そしてそそくさと出て行く

だから親の声は、オレが帰ってきたと気づく前にしか聞いたことが無かった
今最近じゃ一年の中で何日親が家に居るかときかれたら、家にいることを数えた方が楽に終わる
しかも声どころか、顔さえ見なくなってきた


これが、オレの普通の生活―

もう、全てが嫌になる




そんな家の事情を知っているセンコウなんかがよく、困ってることはないかとか
先生になにかできることはないかとか
しきりに聞いてくるが

ウザイ―
こういうのが一番困る

だから簡単に
別に何も、と答える

それでも聞いてくる奴がいた
毎日のように

だが、オレはその裏を知っている
自分の地位を上げるために
生徒を利用する―そんなとこだろう


そんなきたねぇ声も
最初の内ならまだいい我慢できる
だけど時間が経ち過ぎた
いい加減もう腹ただしいだけだ

――だから、外の音をオレは全て拒絶するようになった


なぜ?
それはこっちのセリフだね



だって、
聞きたくないものを聞いてどうする?
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