□恐怖
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「やぁ、先輩」


ゾクッ。

後ろから掛けられた声に俺の全てが止まる。

振り返れないし、歩く事もできない。

俺は”ソレ”が来るのを待つしかない。

そう教えられているから。


「もう、逃げないでいてくれるんですね。うれしーなぁー。」

「もう、あんな思いはコリゴリだ。」

「ん?あんな思いって?」

「………もう、いい」


”ソレ”は俺の腰に手を回している。

ここは死武專の廊下で、しかも今は休み時間。

人が多いのは誰だってわかる。

大人の男二人が抱き合うなんて狂気の沙汰だと俺はこうされてても思っている。


「調教したかいがありますね。」

「………」

「何か言ってくださいよ。面白くないですよ。」

「何を言えばいいんだよ。」

「犯してくださいとか?」

「お前、マジで一遍死ねよ。」


言ってはいけないと思っていても口から出る。

きっと俺はものすごく青白い顔をしているのだろうな。

急に視界が回ったな、と思えば頭に激痛が走る。

どうやら、”ソレ”が俺の頭を掴んで壁に思いっきり叩き付けたから、らしい。


「いいですね。そうこなくっちゃ。」

「そりゃーどうも。」


痛いって何なのかわからないぐらい蹴られて殴られていたのだが、さすがにこれは痛かった。


「今度はマカの頭を掴んで見たくなりましたよ。」

「!!」

「きっと先輩みたいにいい声で鳴くんだろうなぁ〜。ね?スピリット。」

「…………め」

「ん?」

「ごめんなさい。シュタイン博士。マカだけには何もしないでください。俺の………僕の頭で勘弁してください。」

「お望みどおりに」



恐怖
逆らえないのは恐怖心でしかないだろ





end

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