□支配
1ページ/2ページ




真夜中にふっと目が覚めた。

物音が聞こえた訳じゃないし、同居人が小突いてきた訳でもない。

本当にふっと目が覚めた。


「………」


お泊り室は電気とかなくって月明かりでけが頼りだった。

ノロノロと袖を捲くって異常に白い自分の腕を見た。

そして、切る。


「いっ………」


ドロリと出てきた『彼』を見て、安心。

すぐに固まってしまった『彼』を口に含んで転がす。

歯に当たって口の中でコロコロ音がする。

それを飲み込んだ。

カタマリが喉を通っていく。

もう一回同じ事をしようとして、傷口に口を付けると『彼』のパンチが飛んできた。


「うぐっ。」

「また、こんな事やってんのかよ。根暗。」

「起こしちゃった?」

「何回も同じ事を言わせんなよ、アホ。」


傷を塞ごうと無意識に黒血が活動しちゃって起きてしまう………らしい。

僕の腕から出てきた腕が引っ込み、背中にいつもの感覚。

安心。


「血ィなんてよく飲めるな。」

「血じゃなくてラグナロクだよ。」

「………お前本当に馬鹿だよな。」


殴られる。

壁に顔面を何度も打ち付けられる。

飲み込んだ『彼』の一部が僕の体内を攻撃する。


「ラグナロク………痛いよぉ」

「好きなくせに変態野郎が。」

「んふ。大好きだよ。」


朦朧とする意識の中で、僕は無表情で僕を見下ろす彼を見た。

こ瞬間が一番好き。



支配
あぁ、僕の生死の全てが彼に握られているなんて。








end

次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ