□嘘で塗り固めた
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猫毛っぽい髪を優しく梳いてやる。

すればふるふると生まれたての猫のように体を振るわせてくれる。

そっと抱きしめれば、ビクッと体をこわばらせる。

顔を覗き込めば、大きな目を泳がせる。

私はふんわり笑いかける。

あの子はそれを世界の終わりのような顔で見つめている。


「クロナ」

「は・・・い。メデューサ様」

「どうしたの?そんなに震えて寒いの?」

「いえ。」

「可哀相に。こちらにいらっしゃい」


絶対に私に近づきたくないと思っているはず。

それでもクロナは私に近づく。

腕をぎゅっと握り締めて、下唇を噛み、目を左右上下にせわしなく動かしてる。


「クロナ」

「はい。」

「こちらを見なさい」

「見てます・・・」

「そう。」


すっと手を上げれば、ぎゅっと目を閉じられる。

殴られると身構えてるクロナの頬を優しく包む。

それに恐怖したような目を向けてくれるクロナ。

私は笑みを浮かべたまま問う。


「私が嫌いなのクロナ。」

「違います」

「なら、何故私を見ないの?」

「見てました。ちゃんと見てます。メデューサ様」

「そう。」


嘘だってすぐにばれるのに。

私はクロナの頬から手を外すと、体を支えていた尻尾でクロナの体を貫いた。

どうせ、中でラグナロクが硬化しているのでダメージはない。

体をくの字にして飛んでいるクロナを私は冷めた目でみていた。


「クロナ、わかってるわね。今度は許さないわよ」

「はい。ごめんなさい」

「私はクロナが大好きで、愛しているから強くなって欲しいの。わかるでしょ?」


そう問いた私にクロナは薄暗い色をした瞳はよこした。

こんなときだけはちゃんと見てくれるんだもの。

馬鹿なんだわ、この子。


「それは嘘だもん。」


そうね、嘘だわ。

私があなたのこと・・・・・




嘘で塗り固めたそれはどっちかしら?



END
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