正
□母の日にはカーネーションを
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あらかじめ渡されていた鍵でドアを開けて中に入る。
「居る?」
がらんとした造りになっている父親の部屋は酒の匂いがした。
フローリングにも酒瓶が転がっている。
「汚いなー。ちゃんと掃除してんの?」
冷蔵庫を開けると酒しかない。
「死ぬんじゃない?パパ」
なんて自己管理の出来ない親なんだ。
仕方なく掃除をして冷蔵庫の中身も補充してやる。
部屋は換気をして万年床になりつつある布団を干して。
広くなったリビングにマカは寝転んだ。
「………」
音がなくって寂しい。
いると思ってきたのにパパが居なくて寂しい。
マカと呼んでくれる声がないのが寂しい。
「なんだ。私って意外とパパっ子なのかな?」
屈辱的だわなんて思ってるけど、パパは好きだ。
女癖悪くっていつも酒臭くって、いいところなんてあんまり見たこともないけど。
「パパ大好き」
ドサッと音がしたので寝転んだままドアのほうに目をやる。
立っていたのは父親。
慌ててマカは起き上がった。
「あの………さっきのは………深い意味じゃなくってその。」
「マカちゃん」
「………」
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
いつもみたいに顔を破綻させて笑うデスサイズではなくって、父親のように笑うスピリットがいた。
母の日にはカカーネーションを]
あれ?父の日に送る花ってあったけな?
end